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「ガリバー」とからかわれた小学生時代、暴力が日常化した部活指導…元バレーボール日本代表・益子直美(58歳)が赤裸々に明かす“しごきの記憶”
posted2025/01/11 11:01
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
L)Shiro Miyake、R)AFLO
現役時代の自身の後悔が原動力となりスタートした『監督が怒ってはいけない大会』で、子供たちにスポーツの楽しさを知ってほしいと考えている益子直美さんには、同時に「たとえ弱い子がいても誰一人、取り残してはいけない」という使命感も持っている。
「ガリバー」とかわらかれた小学生時代
益子さんの記憶にこびりついている出来事があるからだ。小学生の頃のことである。
当時はまだ益子さんがスポーツに興味を示す前。小学生の頃からすでに周りの子より身長が高く、幼稚園のころから『巨人』『ガリバー』と言われ、男子生徒からからかわれることが多かったという。身長の高さが目立たないよう、休み時間は自分の席の椅子に座ったまま、一歩も動かなかった。
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益子さんが「気が弱い」と分析する自身の性格を決定づけるような事件が起きたのは小学校3年生のときだ。
「席替えの際に担任の先生が男子の学級委員、女子の学級委員を最前列に呼んで『お前は次に好きな子を呼べ』と言って隣に座らせるんです。そうやってだんだんと前方から席が埋まっていきました。わたしは『次、呼ばれるかな』って期待して待っているんですけど結局は誰にも呼ばれずに1番最後だったんですよ。すごく落ち込んで、もう学校が大嫌いになりました」
きっかけになった“担任教師のひとこと”
現代であればすぐに保護者からクレームが来そうな事件だが、当時は特に問題視もされずに終わったという。しかしその残酷な席替えのせいで多感な少女は深く傷ついた。
「あの時の『誰にも選ばれない』というその体験が、わたしの中には大きく残っていて。その後、夢にも見るくらいショックな事件でした。そういう経験もあったので、誰一人、弱い子を取り残しちゃいけない。弱い子たちをなんとかしてあげたいという気持ちに繋がっているのではないかなって思います」
幸い、益子さんは6年生のときに尊敬できる担任教師と出会い、「地獄だった」という小学校生活から抜け出すことができた。バレーボールをやりたいという気持ちが芽生え、やろうと決意したのもその教員のおかげだと語る。
「その先生に『バレーボールをやってみたい』と話したら『益子さんは大きくて本当にかっこいい。絶対にバレーボールが向いている。頑張ってやってみれば』と言ってくれて。その先生の一言で、中学でバレーボール部に入る決断ができました」