「絶対に黙っていてください」隠した脱毛症…理不尽な指導に苦しんだ元バレー日本代表・益子直美が「監督が怒ってはいけない大会」にたどり着いた理由

「お願いです。チームメートには絶対に黙っていてください」

　そういって髪の毛が抜け落ちた地肌の丸い部分を、必死で黒いマジックペンで塗りつぶした。元バレーボール日本代表で、現在は『監督が怒ってはいけない大会』で小学生のバレーボール大会を主宰する益子直美さんの、現役時代の実体験だ。

「当時通っていた美容院の人に“円形脱毛症になってますよ”と言われた時にもう本当にショックで……。イトーヨーカドーのチームメートはみんな同じ美容室に来ていたので、知られたら困るって真っ先に思いましたね。当時はアスリートたるもの、そういう弱いところが知られたらいけないと思っていましたから。メンタルが弱い証拠みたいに言われるのが怖かったです」

インタビューに答える益子直美さん

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春高準優勝→高校生で日本代表入り

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　益子さんは中学でバレーボールを始め、共栄学園2年生のとき、春の高校バレーで準優勝したことをきかっけに世間の注目を集めるようになる。当時の女子選手としては珍しい強力なジャンピング・ドライブサーブとバックアタックを武器に、高校時代には日本代表入りを果たし、イトーヨーカドーでも活躍。可憐で清楚なビジュアルと、ギャップのある力強いプレーで当時のバレーボール人気を牽引した選手のうちの一人だ。特に日本代表入りしてからは、斎藤真由美さん（現・群馬グリーンウィングス監督）と対角を組み、人気を集めた。

　1992年に現役を引退。その後、スポーツキャスターなどを経て現在は女性初の日本スポーツ少年団本部長として活躍している。

　2015年から益子さんが開催している『監督が怒ってはいけない大会』は今年で10年目を迎えた。メディアに取り上げられる機会も増え、昨今ではバレーボールにとどまらず競技の枠を超えた広がりを見せている。

『監督が怒ってはいけない大会』とは、なんともストレートなネーミングだが、最初はこれほど反響が大きいとは想像していなかったという。

「現在も一緒に活動している北川さんご夫妻に誘っていただいて小学生のバレーボール大会を開催したのが最初でした。いろいろな元選手が自分の出身地で小学生の大会を開いてはいたのですが、それは有望選手を発掘するような形式で、子供たちが本当に楽しめる大会というのがなかった。私たちは『子供が楽しめる大会にしたいね』という部分で一致して、一緒に活動することになったんです」

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