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「絶対に黙っていてください」隠した脱毛症…理不尽な指導に苦しんだ元バレー日本代表・益子直美が「監督が怒ってはいけない大会」にたどり着いた理由
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byShiro Miyake
posted2025/01/11 11:00
自身が学生時代に悩んだ経験から、現在は『監督が怒ってはいけない大会』の活動を行う益子直美さん
メンタルコーチングの重要性に気づいた日
ただし、その中に貴重な出会いのきっかけとなるコメントが1通含まれていた。
「開いたうちの1通が共栄学園に通う生徒に近しいメンタルコーチの方からのメッセージで『一度メンタルコーチングの学校見学に来てみませんか?』というお誘いだった。ネガティブメッセージの中に、そういう肯定的なメッセージがあったので勢いで『行きます』って返事をしたんです」
選手時代の益子さんは、怒鳴られ、殴られることが日常化しており、それが続くことで自分の力を信じることもできなくなっていたアスリートの一人だった。
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しかしメンタルコーチングを学ぶことで、知識が壁を乗り越えるときに大きな支えになることを初めて学んだと振り返る。
「自分がメンタルコーチングを学ぼうと思って行動に移したってことで、すごく自分を褒めたいって思えるようになったんです。現役時代は苦しいことから全部逃げて、壁があると普通のアスリートは立ち向かい越えていくと思うんですけど、私、全部避けてきてしまったんですよね。メンタルコーチングを学んだことで『これで、やっと乗り越えることができるな』という体験をした。知識がどれほどアスリートを支えてくれるのか、勉強をして初めて気づき、今も勉強し続けないといけないという考え方に変わりました。この大会は今年10年目ですけど、私が1番成長していると実感します」
「泣きながらバレーボールをやってきたので…」
半年間、授業を受け、その後は与えられた課題をクリアし、認定試験を受けた。一度、落ちたものの2度目で合格する。
『監督が怒ってはいけない大会』の開催に当たり、多くの批判が殺到したにも関わらず、あきらめずに続けてきた動機付けは何だったのだろか。
「やっぱりメンタルコーチングを学び始めて、自分が受けてきた指導方法は間違っていたという確信が持てたことが大きかったです。あとは大会に参加した子供たちが『楽しい』と言ってくれたことですね。その姿を見ると、小学生という“スポーツと出会う入口”の段階では、理不尽な指導でスポーツ嫌いにさせてしまうことは必要ないと実感できました。わたし自身が怒られ、泣きながらバレーボールをやってきたので、わたしと同じ経験をさせることは許せない。とにかくその気持ちは絶対に変わらなかったですね」《インタビュー第2回【しごきの記憶編】に続く》
(撮影=三宅史郎)