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箱根駅伝「青学大の山が強すぎる」問題…「平地は全く走れなくなる」選手が語った“特殊区間への覚悟”それでも「山に懸ける想いがあれば…」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byJMPA
posted2025/01/04 11:03
ともに区間新記録をマークし、青学大の連覇に貢献した5区の若林宏樹(左)と6区の野村昭夢。なぜ青学大は毎年、山区間を「外さない」のだろうか?
若林が明け暮れたのはスクワットだ。
「普通は(長距離では)あまり使わないのですが、山上りは大腿四頭筋をかなり酷使するので、四頭筋を鍛えるトレーニングは非常に多かったです」
一方で、なにかを得ることは、なにかを失うことでもある。
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若林は極めることの意味をわかっていた。そして、“普通のランナー”であることを捨てた。
「山に向けたトレーニングはやっぱり特殊なので、山は走れるのですが全く平地が走れなくなります。でも、そこ(山上り)を追求する思いがあるならできることなのかなとは思っています」
速く走るためには裏の筋肉を使え。これはよく言われるランナーの摂理だ。裏の筋肉、すなわち、ハムストリングスが平地では推進力を生む源になる。若林が日々鍛えてきた大腿四頭筋は太ももで表の筋肉だ。スクワットで表と裏の筋肉のバランスを崩し、トラックなど平地で走るスピードを犠牲にしてまで、山に生きようとした。
昨年11月に記録した1万mの自己ベスト27分59秒53は、大学生でトップ級の域である。だが、若林は達観している。
「もともと大学1年の時に28分20秒を出していますし、それを考えたらかなり時間がかかったなと自分の中で思っています」
天下の険から学んだことは多い。1年から5区を任されて区間3位。2年でも走る予定だったが、心身の不調を訴えて欠場。だが、3年では心を奮い立たせて区間2位の好走を見せた。走るたびにタイムも伸ばし、1月2日に有終の美を飾った。春にはサラリーマンとしての生活が待つ。原から名づけられた「若の神」はにこりと笑った。
「根性だけは人一倍あると思うので、その根性でなんとか乗り切っていきたいですね」
6区で区間新記録を出した野村の場合は…?
1月3日、レース後の表彰式。
6区を走った野村は壇上でわずかに片足を引きずり、蟹の横這いのように階段を下りていた。左足の裏に水膨れができたのだという。