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「こんなに飛ぶのか…正直ビックリ」大谷翔平“二刀流”を現実にした究極のゲーム「世界初1番投手初球弾」の衝撃「人生でいちばん遠くに運ばれた」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2025/01/14 17:00
日本ハム時代の二刀流。大谷は現在よりもだいぶ線が細い
打席から、さらにはマウンドから、大谷が圧をかけてくる中、中田は懸命に立ち直り、スコアボードにゼロを刻んでいく。だが、6回に追加点を奪われた。内川聖一のエラーからランナーを出すと、自らのバント処理のミスに死球が重なり、手痛い2点目を許してしまう。押し出しのホームを踏んだのは、またしても大谷。中田は7回1死で降板し、敗戦投手となるが、許したヒットはわずか1本、大谷のアーチだけだった。
中田は大谷をそれほど苦手にしていなかったが、ホームランは2本打たれている。もう1本は翌'17年8月14日、京セラドーム5階席に飛び込む特大の一発だ。
「人生でいちばん遠くに運ばれました。こんなに飛ぶのかと正直びっくりしました」
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だが大谷からイメージするものは、特大のアーチばかりではない。歩くようにベースをまわるシーンに象徴される、切り替えの巧みさに感心せずにはいられない。
「彼を見ていて痛感するのは、一つひとつのプレーへの対処や切り替えの上手さです。先発投手は初回をまず抑えて落ち着きたいものなんですが、彼はその前に打席に立ってホームランを打ってしまう。だれもやっていない二刀流で成果を出すことができるのは、すべてのプロセスを無駄にせず、確実に生かしているからだと思います。打撃でも投球でも、トライをして結果が出なければ、切り替える。でもそれはリセットではなく、前進なんです。つまり彼はすべてを糧にして進化する、プロセスづくりができているんだと思います」
大観衆はもちろん、敵も味方も呆然とした初球弾。不自然なくらいゆっくりとダイヤモンドをまわった大谷だけが、だれよりも早く次へと心と体を切り替えていた。
キャッチャーからの視点
この一戦でマスクをかぶり、投手大谷の球を受けた大野奨太は、歴史的初球弾の記憶がほとんどない「ベンチにいたんですけど、正直打った瞬間は見ていなかったかもしれません。プレイボールでいきなり、ですから」
ただ、ベンチに帰ってからの大谷については憶えている。
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