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「俺らもプロに行けるかも…感覚がバグる」ドラフト“史上最多”6人指名の富士大ってどんな所? 岩手の奥地「ポツンと一軒大学」を訪ねてみた!
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/17 11:02
富士大の安田慎太郎監督が重視するフィジカルアップ。決して恵まれた環境ではない雪深い東北で、名門大の選手上回るための指針とは?
実際に現地を訪れたことのない人にとって、富士大学がどんな環境なのかをイメージするのは難しいだろう。取材の前に、学生たちがどんな環境で生活しているのかを探るべく周辺を散策してみた。
民家と農地、そして広大な敷地を誇る「岩手県立農業ふれあい公園」のほかに、めぼしい施設は見当たらない。近隣には先述の「さかえや」やカフェがあるが、その他の店は少し離れた国道4号線のロードサイドに点在する程度だった。
最寄りの花巻駅、北上駅はバスでそれぞれ15分、20分の距離にある。「ポツンと一軒大学」というのは失礼な表現かもしれないが、少なくとも都内の大学のように、周辺の至るところに娯楽施設がある環境とは明らかに異なる。
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取材は11月だったが、12月中旬から2月までは本格的な積雪のシーズンになり、あたり一面が雪に覆われる。遊びたい盛りの若者がこの大学で寮生活を送るには相当な覚悟が必要なのではないか、というのが率直な感想だ。
何もないからこそ…「みんな覚悟を持って来ている」
だが安田にしてみれば、こういった周辺環境もひとつのアドバンテージなのだという。
「何もないですからね。逆に言えば、みんなそれだけの覚悟を持って来ている。だからこそ伸びたと思っているので。その意思の強さもかなり大事なところです。向き不向きはあるけど、『富士大じゃなければダメだった』という学生も間違いなくいると思います」
無理強いさせるのではなく、リクルートの段階で「富士大に合った学生」を見極める。それが安田のポリシーだ。
「この環境にあまりストレスを感じない子に入ってきてほしいんですよ。ストレスを抱えながら野球をやっても絶対に伸びない。面談の段階で、『東京の大学を考えています』という子には、率直に『それならやめたほうがいいかもしれない』と伝えます。
申し訳ないけど、うちはそういうところじゃない。4年間遊ぶことなんて一切考えずに、『野球で飯を食う』という覚悟を決めて、退路を断ってプロを目指すところ。変に聞こえがいいことを言ってミスマッチが起きるのが一番イヤだから、高校生には『こういうところだよ』と現実を話すようにしています」