甲子園の風BACK NUMBER
定員割れの県立高「定員120人で志願者68人、倍率は0.57倍」甲子園出場校も消えていく…高校野球の厳しい現実「校名が消える前に実現した69年ぶり“最後の試合”」
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沼澤典史Norifumi Numazawa
posted2024/12/13 18:26
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11月3日親善試合、伊那北vs新庄北。甲子園に2度出場している「新庄北」だが、2年後に名前が消える
かつて甲子園で対戦した高校が、少子化によってその姿を変えようとしている。当時の校名で対戦できるのは今しかない。そんな地方高校の現実が、今回の親善試合の背景に横たわっている。
「やはり、学校の形が変わってしまうのは寂しいですが、仕方ないでしょうね。その前に、甲子園の再戦を実現できてよかったですよ」
伊那北野球部OB会「薫友会」会長の新井洋一氏(82歳)は、後輩たちのプレーに目を細めながら話した。話を聞いた他のOBらも新井氏同様「寂しさはあるが仕方ない」と地域の現実を受け入れている。
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そして、教育現場にいる両校監督も悲観はしていない。
「職員として働いていて、地域が変わっている現状は当然ながら感じています。OBとしては学校の形が変わるのは寂しくないと言えば嘘になります。しかし、新高校をいい未来に向かわせたいという思いのほうが強いですね。我々の地元の最上地域は、山形県の中でも一番少子高齢化が進んでいますが、今後、他の地域でも同様の高校再編は起こっていきます。我々が前向きな気持ちで、よりよく変わっていくことで、他の地域にもプラスに働くんじゃないかと考えています」(新庄北・八鍬監督)
「名前が変わる前に、試合ができてよかった」
伊那北野球部は現在部員数27人と多いが、田中監督も地域の現状をひしひしと感じているという。
「寂しさもありますが、学校の運営面や生徒の学校生活の豊かさを考えた場合、再編は仕方ないかなと思います。高校が少なくなると地域の方が応援できる高校も減ってしまうことになりますが、その中でも応援される学校やチーム作りをしていきたいと考えています。今回は名前が変わる前に、こうして試合ができたのは本当によかったです」(伊那北・田中監督)
両校が来年甲子園に出場し、対戦するというケースを除けば、現校名では今回が“最後”の試合となった。校名だけではなく、ユニフォームも完全に同じとは限らない。甲子園出場校でさえも、少子化の波に飲まれ、学校の形が変わる例は、今後も続くだろう。
かくいう筆者も新庄北野球部のOBである。OBとしては学校の形が変わってしまうのは残念だが、高校野球の変化や高校再編のとば口に立つ両校が、どのような未来を作っていくのか見守っていきたい。
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