プロレス写真記者の眼BACK NUMBER

前田日明もビックリ「この子がWWEに?」小さな体で手にした女子プロレス大賞…Sareeeが明かす“14歳の原点”「浜口京子さんが教えてくれた」 

text by

原悦生

原悦生Essei Hara

PROFILE

photograph byEssei Hara

posted2024/12/11 17:00

前田日明もビックリ「この子がWWEに?」小さな体で手にした女子プロレス大賞…Sareeeが明かす“14歳の原点”「浜口京子さんが教えてくれた」<Number Web> photograph by Essei Hara

2024年の「女子プロレス大賞」を受賞したSareee(28歳)。フリーとして多くのリングで活躍し、マリーゴールドのワールド王座を保持している

アメリカで変わった“ケアの意識”

 猪木との共通項として、いくつかの技があげられる。Sareeeは卍固めも使うが、鎌固め(地獄固め)も使う。いずれも“猪木技”だ。鎌固めはインディアンデスロックからブリッジして相手の首を絞め上げる技で、新日本プロレスの創世記に猪木がよく使った技だが、Sareeeのものはもうひと工夫されている。入り方が猪木とは違う。最初は真ん中からまっすぐ首を取り、サイドに移行して腕も一緒に固める変形の鎌固めになる。

「最初は首だけを絞めていたんですが、腕まで取ったら相手は動けない。私の中ではいい絞め技。ブリッジが強いから、絞め上げられる。誰もやっていないんじゃないかな」

 そして、Sareeeは練習を怠らない。若き日の猪木が「こんなに練習する男は見たことがない」と言われたように。

ADVERTISEMENT

「前はヒンズースクワットや腕立て伏せが中心だったんですが、今はジムで週4回、パーソナルで最先端のトレーニングを受けています。2時間、効率のいいやり方でプロの方に見てもらっている。体の使い方も変わりました。WWEの選手って、ウエイトトレーニングをしっかりやっている。こういうのって大事なんだなと感じて、帰ってきてからも続けています。リングでの練習もできる限りやります。走ったり、縄跳びもしますね。

 体の治療も今はしっかりやっています。大好きなプロレスを続けていくために、ケアは大事だと思っている。アメリカに行く前は治療をおろそかにしていた。痛いところあってもいいやって。意識が変わりました。アメリカではトップの人ほど、自分の体を大事にしている。プロレスラーは病院に行かない方が格好いいと思っていたけれど、それは間違いだとやっと気づいたんです。あれだけリングで痛めつけて、頑張ってくれている体を労ってあげないとだめですよね」

前田日明もビックリ「この子がWWEに行くの?」

 2018年7月、Sareeeは井上京子からディアナのWWWD世界シングル王座を奪取した。その初防衛戦でアジャコングに敗れ、アジャとのノールールでの再戦にも大流血の末、負けた。だがそこから奮起し、2019年4月に里村明衣子に勝利すると、同年5月にアジャを倒してWWWD王座返り咲きを果たした。そして同年6月にはセンダイガールズプロレスリングの橋本千紘とのダブルタイトル戦も制して2冠王者になった。

 勢いづいたSareeeに、WWEのHHHから突然、アメリカ行きの話が舞い込んできた。最初はトーナメントへの参戦の打診だったが、それが3年契約になった。ある日の後楽園ホールで、目の前にいる小さな体のSareeeがWWEに行くことを知った前田日明は、「この子がWWEに行くの?」とビックリしたような表情を浮かべていた。

 WWEに行く前、渡米することを猪木に報告した。だが、コロナ禍でSareeeのスケジュールは大きく変わってしまった。

【次ページ】 中学時代、浜口京子が教えてくれたレスリング

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
#Sareee
#アントニオ猪木
#高橋奈七永
#井上京子
#アジャコング
#里村明衣子
#前田日明
#浜口京子
#アニマル浜口
#林下詩美
#野崎渚
#ボジラ
#なつぽい

プロレスの前後の記事