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「ビックリ…地元の野球部がどんどん廃部」中日の人気選手が“自腹で”援助していた…お茶当番なし、龍空も絶賛する“異例の野球クラブ”とは?
text by
長尾隆広Takahiro Nagao
photograph byTakahiro Nagao
posted2024/10/05 11:00
野球人口増に向けて異例の支援を行う後藤駿太(中日/31歳)
後藤駿太は即答した「すべて協力します」
そんな中、結果的に「S.Y.C」はその動きを見越した形になった。月謝は3000円(硬式ならおおよそ月1万円は必要)、硬式のクラブチームにある「お茶当番」制度といった、父母が常にグラウンドに張り付いていなくていい簡易的なスタイルで入団のハードルを下げた。現在、送迎だけは各家庭にお願いしているが、あくまでも「自分のことは自分でやる」を徹底している。
2年前に鈴木さんから、「渋川の子供たちのために協力してほしい」と相談を受けた後藤は、「僕にできることはすべて協力します」と即答した。後藤は言う。
「地元の野球部がどんどん廃部になっているのが、ショックというかビックリしちゃって。そんな状況なんだ、と。だから(S.Y.Cも)最初は10人くらい集まればいいかな、少しでも野球人口が増えればいいかなって。でも今は30人に迫る勢いで正直驚いています。技術がうまくなることももちろん大事ですけど、野球に興味を持ってくれて、その子たちが思い切り野球を楽しめる環境を作ることが大切。例えば、小学校までは違うスポーツをしていた子供が何かのきっかけで野球に関心を持ってくれて『中学校で野球をやりたい』となっても、中学に野球部がなかったらその子は野球ができない。地域にこういうクラブチームがあればそれも解決することができる」
自腹で支援「金額の問題じゃない」
後藤は、現時点でどっぷりチーム運営に携わっているわけではないが、今年4月に群馬県内8チームが参加した冠大会「駿太カップ」も支援した。春の県大会がなくなった代わりに、県内のチームが目標となる大会を目指そうという鈴木さんと後藤の発案だ。横断幕や優勝賞品、特別賞などを後藤が提供。後藤も「(自腹でも)それで子供たちが喜んでくれるなら。金額の問題じゃない。野球界の未来に投資したい」とうなずく。
昨年オフは実際にチームに足を運んで、子供たちを激励した。後藤がチームを支援すると聞き、友人たちも刺激を受けた。前橋商時代のチームメートはボランティアでメディカルチェックを行い、さらにトレーニングジムを開く地元の球友はトレーニングの技術を無償で教えるなど、「駿太の輪」は少しずつ広がり始めている。