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「ビックリ…地元の野球部がどんどん廃部」中日の人気選手が“自腹で”援助していた…お茶当番なし、龍空も絶賛する“異例の野球クラブ”とは?
text by
長尾隆広Takahiro Nagao
photograph byTakahiro Nagao
posted2024/10/05 11:00
野球人口増に向けて異例の支援を行う後藤駿太(中日/31歳)
その分、伸び代は無限大である。練習も投手と野手が完全に分離して行っており、最近ではiPadに動画を取り込み、2つの比較した映像でフォームをチェックできるソフトの導入も決まった。そして何より、現役のプロ野球選手が地域貢献に携わってくれているのが心強いという。
同チーム相談役の中澤功史さんも「駿太くんが野球選手として活躍してくれていることはS.Y.Cにとっても大事だが、(地元の)他チームの選手にだって勇気を与えている。渋川からでもプロ野球を目指すことができる、というモチベーションに絶対になっている」と断言する。
松山、龍空も賛同「自分もやりたい」
憧れの存在である後藤自身も言う。
「現役の選手だからこそ、地域のために積極的に取り組む意味があると思うんですよね。みんな地元に帰って、一瞬でもいいから野球少年たちの前に顔を出して欲しい。それだけで子供たちは喜んでくれるし、もっと野球を好きになってくれる。こんな田舎といったら渋川の人に失礼ですけど、ここからでも『野球選手になれる』って思ってくれるかもしれません。そこは支配下だろうが育成だろうが関係ない。活躍していてもいなくても現役のプロ野球選手が話す言葉の“重み”があります。野球人口の減少を少しでも止めることができるように、今のうちに行動へ移すことが大事だと思います」
後藤先輩の取り組みに賛同する声も多い。公私ともに後藤と仲が良く、多い時は週4、5日一緒に食事を共にしたことがある中日・松山晋也が言う。
「あ、聞いてます。めっちゃ、いい取り組みですよね。自分もいつかやってみたい。投げている姿を見て欲しい、球場に来てほしいのもあるけど、自分は特に(子供の)野球の技術の部分を上げたい。(トレーニング)施設で、原理原則を分かった上で練習をやれば、間違った努力をしないで済みますから」
同じく、龍空も「駿太さんは、スーパーいい人。優しさがにじみ出てるんすよ。僕も地元の人に『龍空杯』を作ってもらい、すごく嬉しかった。駿太さんの優しさが、野球チームの支援にもつながってるんじゃないですか? 僕ももっと頑張って、子供たちに勇気を与えられるようになりたいですね」
それぞれがプランを持ち、行動に移していけばきっと競技人口の減少は緩やかになっていくはずだ。
プロ野球選手は夢を与える職業だ。少しずつでもいい。積極的に向き合っていけば、いずれ子供たちの大きな希望になる。渋川の球音を聞きながら、一人でも多くの野球選手に支援の輪が広がればいいと感じた。
【引用元】※1 笹川スポーツ財団H P「10代の野球人口」