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「ビックリ…地元の野球部がどんどん廃部」中日の人気選手が“自腹で”援助していた…お茶当番なし、龍空も絶賛する“異例の野球クラブ”とは?
text by
長尾隆広Takahiro Nagao
photograph byTakahiro Nagao
posted2024/10/05 11:00
野球人口増に向けて異例の支援を行う後藤駿太(中日/31歳)
指導者も皆、地元・渋川出身でボランティア。ちなみに「S.Y.C」は「渋川/野球/クラブ」の略であるが、鈴木さんは「将来的には駿太もチーム運営に深く関わって欲しいとの願いも込め、チーム名は、S(駿太)、Y(野球)、C(クラブ)という意味もあります」と教えてくれた。
消えていく野球部…「なぜS.Y.Cは増加?」
少子化やスポーツ選択の多様化により、全国的に見れば野球人口減少は歯止めがかからない。2023年の10代の野球人口(年1回以上の野球経験)は174万人。2001年の282万人と比べると100万人以上も減少したことになる(※1)。
鈴木さんも「昔は、渋川市だけでも中学校の軟式野球(部活動含む)チームが最大12チームありました。今秋の新人戦地区予選では、2チーム(うち1つは2校による合同チーム)まで減少しています。この流れは簡単には止めることができないでしょうね」と明かす。
その中で、入部のハードルを下げた「S.Y.C」は年々入部希望が増えており、創部当初わずか6人でスタートした極小母体が、約2年で25人まで増えた。結成当初は練習人数が足らず、市内の野球部と合同で練習や、野球教室を行ったりもした。最近では、進学先の中学校の野球部が廃止になることを見越した小学6年生も複数、練習に参加しているという。
ナイター、専用球場…超充実の環境
現在は木曜日のナイター練習と土日の週3日が活動日。いずれも市の施設や地元中学校の施設を借り、雨の場合は無償で借りた屋内のトレーニング施設で練習をしている。土日は専用球場も確保する充実ぶりだ。プレーヤー、保護者、チーム関係者に極力負担がかからない運用にすべく、市と連携している。自宅からグラウンドまでの送迎が困難な子供を1回500円・月額3000円の料金で送迎する行政サービス「こどもデマンドタクシー」を利用していた(現在は休止中)。
「S.Y.C」はまだまだ発展途上だ。現段階では、お世辞にも「強豪チーム」と呼べるほどではない。