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オリンピックへの道BACK NUMBER
「そこは違いますと伝えたい」パリ五輪で物議“高すぎるルートセット”を森秋彩が語った…「意図して私を落としたわけではない」語気を強めた言葉
posted2024/10/06 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
L)JIJI PRESS、R)Hirofumi Kamaya
8月8日、スポーツクライミング「ボルダー&リード」女子の準決勝が行われ、森秋彩は総合4位で決勝に進んだ。
決勝は8月10日。ボルダーからスタートする。ボルダーは設置された4つの課題に挑む。それぞれの課題には「ゾーン」と呼ばれるホールドがあり、最初のゾーンに到達すると5ポイント、2つ目のゾーンでプラス5ポイント、最後のトップホールドを両手でコントロールすると「完登」、25ポイント。つまり4つ完登すれば100ポイントを得られる。
その第1課題、森は思いがけない事態に直面する。最初のホールドが高い位置にあり、つかむことができない。何度も挑んだが捉えられず、0点に終わった。
「オブザベーション(課題を下見して攻略方法を考える時間)のとき、スタートのところからけっこう高いなと思いました」
「高いな」と観察して感じたホールドは、「やってみたら、思っていたよりも距離を感じました」。
決勝進出8名のうち完登者も少なくない課題であった。その中でただ一人、ポイントなし。最終的な成績にも影響を及ぼすことになったが、その課題に対して国内外から大きな反響が起こった。決勝に進んだ8人の中で最も身長が低い森にとって、つかむことすらできない高さにホールドが設定されたことに対し、ルートの設定が公平ではない、不当だ、さらには差別的だという声も出て、それらの声は容易におさまらなかった。
「私の実力不足のせいで…」森本人が繰り返した言葉
渦中の森本人は、このように振り返る。
「物理的に不可能ではないと思うし技術があればできたと思うので、単なる実力不足だったと思います。『かわいそうだ』とか『仕組んだんじゃないか』とか反響が大きかったですけれど、決してそうではなくて、実際のところは私の実力不足です。以前から脚力の面、筋力の面に課題はあって、そこを出されてできなかったので自分の練習不足だし、決して意図して私を落とそうと思ったわけではないと思います。体格的に不利な分、実力をつけていくしか方法はないのかなと思っています」
何度も「実力不足」と繰り返す。その姿勢は一貫していた。
「私の実力不足のせいで、ルートセッターさんが責められたり、フランス人全体を否定するようなことがあるのは申し訳ないと思うので、そこは違いますと伝えたいです」
ただ、大きな反響が起こったことにこのような思いも抱いている。