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「そこは違いますと伝えたい」パリ五輪で物議“高すぎるルートセット”を森秋彩が語った…「意図して私を落としたわけではない」語気を強めた言葉 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byL)JIJI PRESS、R)Hirofumi Kamaya

posted2024/10/06 11:04

「そこは違いますと伝えたい」パリ五輪で物議“高すぎるルートセット”を森秋彩が語った…「意図して私を落としたわけではない」語気を強めた言葉<Number Web> photograph by L)JIJI PRESS、R)Hirofumi Kamaya

総合4位となったパリ五輪、ルートセット問題でも話題を集めた森秋彩。本人に思いを聞いた

「いろいろと言ってくれている方って多くの場合は私の味方でいてくれているということなので、応援してくださる人がこんなにもたくさんいるということはうれしく思います。そこはしっかり感謝しつつ、実力をつけていきたいです」

悔いが残るのは、じつは物議の第1課題ではなく…

 ボルダーでは7位にとどまった森だが、リードでは完登まであとわずかに迫り、1位。観客席では多くの人々がスタンディングオベーションで称えたように、森の存在を広く知らしめた。

 結果、初めてのオリンピックを4位で終えたが、森が悔いを残すのは第1課題ではなく、2つ目のゾーンまでにとどまった第2課題だ。

「あれは得意でしたし、コーチにも『今の実力でもあれは落とせる(クリアできる)よね』と指摘されました。できるものをやりきれなかった悔しさは残ります。あれがもしできていれば表彰台も行けていたと思うので、そういった悔しさを持ち帰ってきて、練習に熱が入って頑張れているので、今回はあれでよかったのかなと思っています」

 終えてみて、「楽しもう」と思っていた大会前とは異なる気持ちも抱いている。

「順位は気にせず行こうと思っていましたけれど、あと一歩でメダルとなるとやっぱりほしかったなという思いもありました。ただ、ここで獲っちゃうと安心、満足しちゃっていた部分もあると思います。それにこれだけいろいろな教訓、反省点があったら4位は妥当な順位だなとも考えています。悔しい思いでいっぱいで、でもそれをバネにして今頑張れているので、メダルを獲ってしまうより、自分を奮い立たせられている今となってはよかったなと思います。そういう意味では、悔しさを持って帰るにはちょうど良い順位だったと思います」

先輩たちに言われた「秋彩ちゃんらしい登りでよかったよ」

 悔しさの中身についてはこう語る。

「自分にだめなところがあったからこその4位だと思うので、内容への悔しさがあります。また、オリンピックでは表彰台に乗るか乗らないかで格差があります。実際に男子で銀メダルを獲った安楽(宙斗)選手が(帰国時の搭乗機では)ビジネスクラスだったり、花束をもらったり、3位以内と4位ではかなり違っていて『こういうことか』と思いました。そういった単純な順位の悔しさというのも実感しました」

 悔しさの一方で、たくさんの糧も手にした。

 試合を終えたあと、応援に駆け付けていた男子の楢崎智亜が森のもとに来て、2人は言葉を交わした。

「リードに関しては『惜しかったね』、ボルダーについては『スラブはできたよね』みたいな感じのアドバイスをしてくれて、最後は『お疲れ』って。楢崎さんは決勝に出れなかったのに、私のことを気にかけてくれて、憧れますし、私もそういう先輩になりたいなと思いました」

 東京五輪で銅メダルを獲得した野口啓代も解説者として会場にいた。野口とはリードで完登しガッツポーズする約束をしていた。

「啓代さんには『ガッツポーズはロスに持ち越しだね』と言われて、でも『強かった』って言ってくれました。『ボルダーも3課題目は秋彩ちゃんらしい登りでよかったよ』と言ってくれて。啓代さんと話しているといつも心が落ち着くし、啓代さんとの約束を果たせるように、ここで終わりじゃなくてもっと頑張ろうと思いました」

【次ページ】 「オリンピックにまた出たい」

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