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「自分を押し付けすぎていた場面があったんだと」あの“リード批判”騒動、海外での武者修行も経て…楽天・早川隆久が語った「覚醒の理由」
posted2024/09/30 11:04
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
登板当日になるとナーバスになる。先発ピッチャーの多くがきっとそうであるはずだ。
1週間に1度のマウンドのためにコンディションを整え、パフォーマンスを最大限に発揮するべく全神経を集中させる。チームメートやコーチ、スタッフはその意欲を慮り、気を散らせまいとあえて距離を取る。
楽天の早川隆久も少し前まではそうだった。
それが今の彼は、登板日の全体練習から穏やかな表情で他の選手と談笑をするなど、尖った様子は微塵も感じられない。
自身の変化について、早川は語る。
「これまでは登板日の朝からゾーンに入れていたんですけど、マウンドに上がるまでの時間が長すぎて、集中力を高めきれないことが多かったんですね。だから、『オンとオフの切り替えをはっきりさせたほうがいいんじゃないか』ということで、試合の数分前から一気に入れるようにしたら、それが自分にとってはいいんじゃないかと思えるようになって」
全体練習後に食事を摂り、ミーティングを終えてからピッチングの最終調整に入る。そして、試合直前に音楽アプリでDJのリミックスを脳内に流し込む。ここでようやく、早川が戦闘モードのスイッチをオンにする。
自分に適したルーティンを手に入れることによって、早川のパフォーマンスはより安定感を増している。11勝、防御率2.37、150奪三振の成績はパ・リーグ上位に位置する(成績はすべて9月27日現在)。昨年までの3年間で通算20勝のプロ4年目のピッチャーは、「エース」と呼ばれる存在へ大きな一歩を踏み出したのである。
覚醒のきっかけとなった海外リーグでの登板
ここまでのパフォーマンスを実現させる背景として、前述したルーティンだけではなく早川には数々の変化が訪れていた。
そのなかで彼が第一に挙げるのが、昨年末に派遣された、オーストラリアでのウインターリーグの経験である。成り上がりを志す若者が、野心をこれでもかというくらい放出させている。早川はそんな各国の選手たちの姿に、自らに不足していたものを見出した。
ピッチャーとしては好奇心だ。