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「あの頃はマジでキツかった…」ラグビー人生の絶頂にいた堀江翔太は、なぜ“ラグビーやめよう”と考えたのか? W杯8強につながるサンウルブズ始動
posted2024/09/08 11:10
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
昨シーズン限りで現役を引退した元ラグビー日本代表・堀江翔太(38歳)。あらためて、堀江のキャリアを振り返ると日本ラグビー発展の歩みそのものであることに気付かされる。【NumberWebインタビュー全3回の1回目】
もう、あの巧みなブレイクダウンのスキルを見ることもないのか。
もう、あの軽妙なパスを見ることもないのか。
そしてもう、ピッチであのヘアスタイルを見ることもないのか。
日本代表としてワールドカップ(W杯)4回出場、76キャップ。帝京大学卒業後、当時の三洋電機でプレーし、それ以来ワイルドナイツひと筋、38歳の堀江翔太が昨季限りで引退した。
なんだか、さびしい。まずは現役を退いた後の生活について訊いてみる。
「引退すると、こんなに違うのかと思ってます。ストレス、プレッシャーがないし、次の日のことを考えなくていいんですよね。現役のときって、何してても“明日の練習”のことが頭のどっかに引っかかってるんですよ。ラグビー中心の生活だったんで、100%リラックスすることってなかったんです。いいですよぉ、明日のことを考えないで生活できるのって」
堀江のキャリアを振り返るには、経験したことがあまりにも膨大すぎる。取材する側からすると、「取っ掛かり」が多すぎるほどだ。
まずは、近いところで「スローフォワード」の件から訊いてみようか。
昨季のリーグワンのファイナルは、ワイルドナイツとブレイブルーパスとの間で行われた。この試合は「名作」となった。
20対24と4点差を追うワイルドナイツは後半38分、16フェイズ目で長田智希の逆転トライが決まった――かに思われた。しかし、堀江のパスがTMOの対象となってしまう。結果、堀江のパスがスローフォワードと判定され、トライは取り消しになってしまった。