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《単独インタビュー》中上貴晶「ダメ出しもしたが感謝しかない」MotoGP残り8レースのいま振り返るホンダへの思い 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2024/09/05 11:02

《単独インタビュー》中上貴晶「ダメ出しもしたが感謝しかない」MotoGP残り8レースのいま振り返るホンダへの思い<Number Web> photograph by Satoshi Endo

シーズン途中にテストライダーへの転身を表明した中上だが、その表情は明るい

 LCRホンダは他のチーム同様に2台体制だが、1台はカストロールがスポンサーのCASTROL Honda LCRでライダーはヨハン・ザルコ。もう1台は出光がスポンサーのIDEMITSU Honda LCRでライダーは中上。チームの中に2つのスポンサーが同居する変則オーダーは、中上のMotoGP参戦初年度から続いている。

 ホンダは、今年のシーズン前半戦、来季に向けてプランを立てていた。中上の後継者として、ホンダ育成ライダーで今季スペインのMSIで走る小椋藍を1番手、ホンダチームアジアのソムキアット・チャントラを2番手としてリストアップしていた。その2人次第では中上が継続というプランだったが、小椋がホンダではなくアプリリアのサテライトチームからのMotoGP参戦を決断。一方のチャントラがIDEMITSU Honda LCRへの昇格を快諾した。

 第11戦オーストリアGP終了時点での中上のランキングはホンダ勢4人中3番目。チームメートのザルコが14ポイントで総合18位、00年のチャンピオンでレプソル・ホンダのジョアン・ミルが13ポイントで総合19位、同じく13ポイントで中上が総合20位、今季レプソル・ホンダに加入したルカ・マリーニが1ポイントの24位だった。実力者揃いのホンダ勢の中にあって、中上は十分に継続可能なリザルトを残していたが、ホンダには育成シリーズから昇格してくるライダーにチャンスを与える必要もあった。

「ホンダからテストライダーのオファーをいただいてから考える時間は十分にあったし、いろんな意味でいいタイミングだと思った。バイクの現状もあるし、MotoGPで7年戦えたという気持ちもある。変化を求めていた部分もあるし、このタイミングを逃したら……という思いもあった。来季はテストライダーとしてこれまでと違うものが求められる。環境が変わるのは、自分にとっていいことだと思っている」

バイク人生のターニングポイント

 グランプリにデビューしてから17年。その間には多くのターニングポイントがあった。一番辛かったのは全日本に戻った2年間で、日本人ライダーが再びグランプリでシートを掴むのは容易ではなかった。だが、中上は全日本で圧倒的な強さを見せつけ、イタリアのMoto2チームからのオファーを掴み取り、ホンダチームアジアを経てMotoGP参戦を果たした。

「125cc時代はすごく苦労した。中堅チームでバイクも古く、トップチームとは別のカテゴリーを走っているように思えた。Moto2でグランプリに復帰してからは言葉の問題がなくなり、外国のチームの中でうまくコミュニケーションを取れるようになってリザルトも上がった。MotoGPが自分の中ではっきり見え始めたのは、Moto2に参戦していた16年にオランダで初優勝したとき。このレースが一番記憶に残っている」

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