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[現地評&チーム分析]冨安健洋「アーセナルが求める“昨季以上”の働き」
posted2024/08/30 09:01
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph by
Getty Images
アルテタ政権6年目を迎えたガナーズは、今季も打倒シティの最右翼として開幕戦も快勝スタート。だが、隙のない陣容は、裏を返せば怪我で出遅れた冨安にとって命運がかかる1年の始まりとも言えるのだ。
「今シーズン、また新たな物語が始まる。一からのスタートになるが、このストーリーを美しいものにしたい」
2-0で快勝した開幕戦後、ミケル・アルテタ監督は今季の展望についてこう話した。2季前は首位マンチェスター・シティに5ポイント差の2位、昨季もシティとわずか2ポイント差の2位で涙を飲んだ。覇者シティとの勝ち点差は縮まってきたものの、2季連続で悲願のリーグ優勝は叶わなかった。
それでも、昨季の戦いぶりには確かな成長の跡が見えた。スタッツを紐解くと、失点29はリーグ最少。無失点試合もリーグ最多の18試合で抜群の安定感を誇った。一方、攻撃に目を向けても、リーグ2位の91ゴールを記録。攻守両方で完成度を高めた昨季のスカッドをベースに、21年ぶりのリーグ優勝を目指す。
チームの骨幹を成しているのは、ポジショナルプレーの考え方だ。ピッチ上でのボールの場所や相手のアプローチによって選手が立ち位置を変え、数的優位を作り出すこのアイデアは、在任6季目のアルテタ政権のチーム全体に浸透している。実際、ボール保持時に左SBが中盤底の位置に移って守備的MFのように振る舞えば、インサイドMFが最前線までポジションを押し上げて攻撃に厚みを加えるなど、ピッチ上の全員がオートマティックに動くことで、一体感を持ちながらパスを繋いでいる。「パス&ムーブ」を繰り返すこの流麗なアタックこそが、アーセナル最大のストロングポイントである。