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[守護者の告白]冨安健洋「この悔しさを忘れない」
posted2023/01/26 09:01
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Ryu Voelkel
カタール大会までの道は、怪我との戦いの日々でもあった。世界最高峰のリーグで積み重ね、磨いてきたもの。その全てをぶつけられなかった悔しさを胸に、彼は口をひらくことなく、自身のクラブへと戻っていった。宿敵トッテナムとの試合を終えた1月の午後。小雨降るロンドンに彼はいた。W杯の記憶を言葉にして――。
ハリー・ケインに背中からぶつかった。
スパーズの観衆の前で、冨安健洋が平然と。ぶ厚い肉体を感じながらも、後ろから何事もなかったかのようにボールをかっさらう。実際、何事でもなかった。
「ケインからボールを奪ったというのも、僕としては特に何でもないことなんです。仮にあれがケインじゃなかったら何も言われていないと思うので」
ボールを刈り取り、跳び、身体でぶつかる。常に成功するわけではなく、やられることもある。毎試合どこかの有名選手と対戦するプレミアリーグの舞台では、淡々と、真っ直ぐな評価が下される。そんなアーセナルでの日々に感じる充実がある。
「世界的に名の知れた選手が多くいるので、いい意味でも悪い意味でもそんな選手からボールを取ったり、突破を止めたり、なにかワンプレーするだけで日本では取りあげられることもある。90分間で良くなかったとしても、名のある選手を一発バンと止めれば、そこがフォーカスされやすい。あまり踊らされないようにとは思っていますね」
宿敵に完勝した首位のアーセナルは、さらに差を広げた。冨安はいま、プレミアで一番高いところにいる。