甲子園の風BACK NUMBER
甲子園“飛ばないバット”は采配も難しい「バントさせておけば…」明徳義塾・馬淵監督、去り際の本音「ここを見つめ直さないと勝てない」
text by
間淳Jun Aida
photograph bySankei Shimbun
posted2024/08/28 17:01
明徳義塾ナインと馬淵史郎監督。新基準バットの時代にも対応しようと、頭を巡らせている
「竹下にバントのサインを出すなら、バントの上手い選手にやらせようと思いました。思い切って代えましたが、痛いミスになってしまいました。送っておければリズムができたし、何とでもなったのですが」と回想した。
チャンスは続く。5番・長谷川烈央選手の打球は一、二塁間へ転がった。しかし、関東一の二塁手・小島想生選手に飛びついて捕球され、一塁でアウトを取られる。2死二、三塁となった後も、三遊間へのゴロを関東一の三塁手・高橋に横っ飛びで抑えられた。相手の連続ファインプレーで無得点。馬淵監督は「相手に上手いプレーをされました。ツキがなかったですね」と語った。
関東一のセカンドは準備ができていた
ツキがなかった――。名将が何度か口にした言葉。ただし要因は運だけではない。好守を見せた関東一の二塁手・小島は準備ができていた。
「相手は送りバントを失敗していたので、次の打者としては最低でも走者を進めるために右方向へゴロを打ってくるだろうと予測していました。坂井のバント処理もそうですが、普段から走者を置いた守備練習を繰り返しています。焦りはなく、普段通りやった結果です」
関東一の熊谷俊乃介捕手も勝負所での好守備は偶然や運ではないと考えていた。小島のコメントを、さらに掘り下げて解説した。
「相手チームの打者の特徴はバッテリーだけではなく、チーム全員で共有しています。内野手は自分の配球を予想して守備位置を変える時もあります。守備でアウトを取れるかどうかは事前の準備と一歩目の動きで決まる部分が大きいので、チーム全体で大事にしています」
関東一の選手たちは「伝統的に守備からリズムをつくるチーム」と口をそろえていた。そして、夏の甲子園では初めて導入される低反発バットの影響で、守備への意識は一層強くなった。内野ゴロが増え、アウトを取れるかどうかで勝敗が決まると考えている。明徳義塾戦でも勝負どころの守備が明暗を分けて白星を手にした。
“負けが必然のゲーム”だった
バットの変更による守備への考え方は馬淵監督も同じだ。元々、緻密な野球をスタイルとしているが、守備のミスが勝敗に直結すると聖地で痛感した。