甲子園の風BACK NUMBER
甲子園“飛ばないバット”は采配も難しい「バントさせておけば…」明徳義塾・馬淵監督、去り際の本音「ここを見つめ直さないと勝てない」
posted2024/08/28 17:01
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Sankei Shimbun
試合後のインタビュー。記者の質問を受ける前に、明徳義塾の馬淵史郎監督は口を開いた。
「負けるべくして負けた試合でした」
ゲームプラン通りロースコアの展開に持ち込んだ。だが、守備でも攻撃でも大事な場面でミスが出た。
「バントさせて構わない」との伝令を出したが
今大会で準優勝を果たすことになる、関東一に一時は勝ち越しながらも2-3で惜敗。初戦に勝利して甲子園の春夏通算勝利数を55に伸ばした68歳の名将は「守れない、バントできない、大事な中盤以降に先頭打者への四球。絵に描いたような負けパターンでした」と振り返った。
飛距離が抑えられた新基準バットでは、1点を取れるかどうかが大きなポイントとなる。
この試合では馬淵監督が言及したように、バントが勝敗を分けた。
守備のミスが出たのは1点リードの5回表だった。2死三塁の場面で、明徳義塾の二塁手・平尾成歩選手の正面にゴロが転がった。スリーアウトチェンジと思われた打球だったが、平尾のグラブを弾いてエラーが記録された。
続く6回表。悪い流れを引きずったまま、明徳義塾の池崎安侍朗投手は先頭打者を四球で歩かせる。すかさず、馬淵監督が伝令を送った。
「バントをさせて構わない」
指揮官は関東一の4番・高橋徹平選手に犠打を決めさせ、1死二塁からの勝負を描いていた。高橋は初球からバントの構えを見せる。ところが、池崎はカウントを悪くして、フルカウントからバスターエンドランを決められてしまう。無死一、三塁とピンチが広がり、5番・越後駿祐選手に勝ち越し打を許した。馬淵監督は試合後、悔しさをにじませた。
「先頭打者の四球が痛かった。この日の打撃の調子を考えれば、相手の4番にはバントのサインが出る。バントをやらせろと言ったのに、バスターエンドランをかけられるカウントにしてしまった。バントをさせておけば、そんなに大きなピンチにはなっていなかった」
攻撃では代打で送りバントを仕掛けたが
攻撃面のミスは1点を追う7回無死一、二塁で起きた。馬淵監督は4番・竹下徠空選手に代打を送る勝負に出た。犠打で1死二、三塁をつくって同点、逆転へとつなげるシナリオを描いた。ただ、代打・北浦龍選手は2球で追い込まれ、3球目のバントは坂井遼投手の正面に転がった。ゴロを捕球した坂井が三塁に送球。アウトカウントだけが増える形となった。
指揮官はこう振り返る。