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「会場が静かすぎる…」馬術でいったい何が?「ヴェルサイユ宮殿がほぼ見えない」「棄権した日本の人馬に拍手」記者が体感した“パリ五輪の馬文化”
posted2024/08/20 11:39
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
Getty Images
「会場が静かすぎる…」ヴェルサイユ開催の独特な雰囲気
ヴェルサイユ宮殿は遠かった。パリ五輪と言いながら、厳密にはパリではなく所在地はイヴリーヌ県。パリ中心部から1時間ほどかかる。イメージとしては東京駅から西へ府中にある東京競馬場、大阪梅田駅から北東へ淀にある京都競馬場に行くようなものだ。
パリ中心部から鉄道で南西方向に45分ほどで、ヴェルサイユ宮殿の最寄り駅に到着する。ただ駅からすぐに馬術の会場に行けるかというとそうではなく、バスを使って「ヴェルサイユ宮殿アリーナ」に行く必要がある。バスに揺られること10分ほど。さらにバスを降り、徒歩で20分。途中にウッドチップが敷かれた約1マイル(1600m)の直線を歩くと、計75分でようやく観客席のスタンドが見える。ちなみに徒歩が困難な人向けには、ゴルフカートのようなトヨタの車両が準備されており、バス停から競技会場入口近くまでピストン運行していた。
海外競馬の中継映像では、中東やフランスの競馬場で礼服やドレスに身を包む紳士淑女が映し出され、高貴な印象がある。ライダー(乗り役)のドレスコードが決められている馬術も、観客の服装からして格式高いのかと思ったが、オリンピックの会場は競馬場に比べるとそこまで厳格ではない。というより、気温30度を超える夏日だったこともあり、半袖、半ズボンが多い。来場者は他の競技会場と比べると若い大人数のグループはあまりおらず、年齢層は若干高めの印象だ。そのため、ワンピースやポロシャツ、人によってはジャケット着用など少し上品な装いが多く見える。
競技が始まり、驚く。歓声が聞こえないのだ。他の会場はというと、エッフェル塔下のビーチバレー会場ではスタッフが水のホースをぶん回し、場内DJが盛り上げる。上半身裸になる人も多数出現しお祭り感満載だった。お家芸のフェンシングが行われたグラン・パレでは「審判の掛け声が聞こえないほど」(日本選手談)の母国応援「アレ・レ・ブルー(フランスよ、行け)」の大合唱。観衆が足を踏み鳴らし、スタンドが崩れるのではないかというほどの強い振動も起きていた。