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「会場が静かすぎる…」馬術でいったい何が?「ヴェルサイユ宮殿がほぼ見えない」「棄権した日本の人馬に拍手」記者が体感した“パリ五輪の馬文化” 

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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photograph byGetty Images

posted2024/08/20 11:39

「会場が静かすぎる…」馬術でいったい何が?「ヴェルサイユ宮殿がほぼ見えない」「棄権した日本の人馬に拍手」記者が体感した“パリ五輪の馬文化”<Number Web> photograph by Getty Images

パリ五輪の馬術競技が行われたヴェルサイユ宮殿アリーナ。写真は障害飛越個人で金メダルを獲得したドイツのクリスティアン・ククク

 そんな歓声や振動が競技中に一切ない。静かすぎる。まるで3年前の無観客試合のような雰囲気。競馬場のようにレース中も野次やざわめきが聞こえる雰囲気とは大きく異なる。席に向かう階段で足音をたてるのもはばかられるほどだ。

じつは会場から遠いヴェルサイユ宮殿「ほぼ見えない…」

 障害飛越個人の演技をスタンドからずっと見ていると、演技開始前に一斉に静かになるが、演技が終わると盛大な拍手を送るということがわかった。人馬が飛越を始める前から最後の飛越を終えるまでヴェルサイユ宮殿アリーナには静寂が訪れる。途中、障害物のバーに馬の脚が触れたときだけ、バーが落下する音と同時に「ああ」とか「おお」という低いため息が束となって漏れる。馬術という競技を集中して観戦している静かな熱気を感じる。そもそも馬術観戦のマナーとして競技中は静かにすることが求められているが、それがしっかり徹底されている印象なのだ。

 席に腰掛け、景色を見て気づいたのは、肝心のヴェルサイユ宮殿はかなり遠いということだ。西側スタンドの向かいにかろうじて見えるくらい……というかほぼ見えない。言われないと気付けないレベル、晴れていなければ霞んでしまうほどの大きさだ。十字型の大運河「グランドカナル・デ・ヴェルサイユ」を挟んで2kmほどの距離がある。筆者はカメラのズーム機能を使って、ようやく宮殿上のトリコロールを確認できた。ヴェルサイユ宮殿の庭園はここまで広いのかと思い知る。

 面積は東京ドームで計算すると、約220個分。東京ディズニーランド換算でも約19.6個分の広大さ。その一部の広場で三方をスタンドに囲まれ、馬術競技は行われたのだ。障害飛越個人はドイツ、スイス、オランダ選手の順にメダルが決まり、表彰式へ。他の競技と異なり、馬にまたがり表彰台まで向かう。受賞の直前に馬を降り、陣営のスタッフに預ける。表彰式の最中はバックに愛馬とヴェルサイユ宮殿が控える。そして再び馬にまたがり、メダルを首に掛け場内を周回していく。他の競技とは異なるセレモニーの流れになっている。

【次ページ】 なぜ? 棄権した日本人選手と愛馬にも“温かい拍手”

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