将棋PRESSBACK NUMBER

“藤井聡太14歳の30連勝を阻んだ男”佐々木勇気とは何者か「NHK杯で藤井撃破→竜王戦に挑戦」「スポーツ青年…最近の趣味は盆栽や書道」 

text by

田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2024/08/18 17:00

“藤井聡太14歳の30連勝を阻んだ男”佐々木勇気とは何者か「NHK杯で藤井撃破→竜王戦に挑戦」「スポーツ青年…最近の趣味は盆栽や書道」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2017年竜王戦決勝トーナメントでの佐々木勇気五段。藤井聡太四段の連勝記録を「29」で止めた

「負けた後に悔しさが湧いてこないのは初めての感覚です。読みの深い藤井さんに研究勝負をぶつけ、将棋の理解度が深まるだけで大満足でした。藤井さんの本当の強さは、長い持ち時間を使って膨大な水面下の変化を読み合わないと、分からないと思います」

 とはいえ佐々木は実力を着実につけ、近年はトップ棋士としての実績を積み上げてきた。

 22年度のNHK杯戦で佐々木七段は永瀬王座、広瀬八段らに勝ち、決勝で藤井竜王と対戦。相掛かりの出だしから力戦となり、難解な攻防が続いた。

 最終的にこの一局を制したのは藤井だった。終盤で優勢になると、佐々木の追い上げをかわし、初優勝を果たした。

NHK杯優勝と順位戦A級残留が自信になったのでは

 しかし佐々木は同じNHK杯で翌年度、雪辱を果たす。

 佐藤天彦九段、増田七段らに勝ち、決勝で藤井竜王・名人と再戦。佐々木は角換わり腰掛け銀の戦型から新研究の手法を用いて攻め込んだ。藤井が反撃した難解な終盤で、藤井に失着があって形勢は逆転し、佐々木が際どい寄せ合いを制して勝った。藤井への勝利は前述した竜王戦決勝トーナメント2回戦以来のことで、佐々木にとっては全棋士参加の一般棋戦で初優勝となった。

 

「前回の決勝は研究から逃げて力戦にしてしまった。今回に研究勝負にしたのは、それで負けても収穫があると思えた」

 終局後にこう語った佐々木は、23年度のA級順位戦でも粘りを見せた。24年2月のA級順位戦の最終戦で敗れると降級が決まる状況にあっても、苦戦に耐えて辛勝して何とか残留を果たした。

「名人戦挑戦を目指していたが、まだまだ遠いと感じた。来期もA級で指せるのはうれしい」

 順位戦全日程終了後、率直に喜びを口にしている。

 佐々木にとって、NHK杯戦優勝とA級残留は大きな自信となり、何かがふっ切れたようだ。24年度の公式戦の成績は10勝1敗と9割台の高勝率を残している(8月15日時点)。

藤井竜王にどうやって勝つかを考えてきたが…

 今期の竜王戦は2組で優勝して決勝トーナメントに進出。久保利明九段、佐藤康光九段に勝って、自身初となる広瀬九段との挑戦者決定三番勝負に臨んだ。

 広瀬−佐々木の第1局(7月29日)の戦型は角換わり腰掛け銀。互いの研究どおりに激しい攻め合いが繰り広げられたが、佐々木が用意していた受けの好手によって優勢となり、寄せ合いを制して勝った。広瀬は「日頃の研究不足が出てしまった」と敗因を語った。

【次ページ】 新しい研究手順をぶつけて藤井を追い込めば

BACK 1 2 3 4 NEXT
#佐々木勇気
#藤井聡太
#永瀬拓矢
#広瀬章人

ゲームの前後の記事

ページトップ