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女流棋士・西山朋佳29歳が初の女性棋士を逃して“異例の会見で涙した日”…「豪快な将棋を指して合格を」棋士も応援する“編入試験組の歴史”

posted2024/08/04 11:00

 
女流棋士・西山朋佳29歳が初の女性棋士を逃して“異例の会見で涙した日”…「豪快な将棋を指して合格を」棋士も応援する“編入試験組の歴史”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

朝日杯1次予選に勝って「棋士編入試験」の受験資格を獲得し、報道陣の取材に応じる西山朋佳女流三冠

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 西山朋佳女流三冠(29=白玲・女王・女流王将)はプロ公式戦にも出場して好成績を収めてきた。そして7月4日の対局に勝ち、「棋士編入試験」の受験資格を得る所定の条件を満たした。9月から始まる試験に合格すれば、初の「女性棋士」が誕生する。

 また、昨年2月に棋士編入試験に合格した小山怜央四段(31)は今年7月15日の対局に勝ち、所定の成績を挙げてフリークラスから順位戦C級2組への昇級を決めた。棋士編入試験の成り立ち、新たな出発点に立った小山四段の棋士人生、西山女流三冠の奨励会時代の辛苦、棋士編入試験に至るまでの経緯と合格の見込み、などについて田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】

西山が挑む「棋士編入試験」の成り立ちとは

「棋士編入試験」は2005年5月に制定された。その成り立ちを説明しよう。

 奨励会(棋士養成機関)を三段で退会した後にアマ棋戦で活躍し、特別参加したプロ公式戦で5年間で16勝6敗という好成績を挙げたのは瀬川晶司アマ(現六段)。瀬川は棋士になりたい思いを断ちがたく、仲間の強豪アマや親しい棋士にプロ入り希望の件を相談した。そして、彼らの勧めに応じて05年2月に「将棋連盟の正会員になりたい」という旨の嘆願書を連盟に提出した。

 その件について話し合った棋士たちの会合では、「奨励会制度の崩壊になる」「付け出し三段なら認める」など、否定的な声が多かった。厳しい三段リーグを勝ち抜いた若手棋士は特に反対した。しかし、「実力のあるアマに対して、連盟は門戸を開放すべきだ」という棋戦関係者の主張、瀬川を応援する棋士たちの力添えによって、連盟内の空気は次第に変わっていった。メディアも「サラリーマンのプロ棋士への夢」という視点で大きく取り上げた。

 連盟理事会は、瀬川を門前払いするような措置は世間的に好ましくないと判断し、「瀬川アマの棋士編入試験を特例で認める」という議題を05年5月の連盟総会に上程した。

 そして投票の結果、129票対52票で可決された。「アマに門戸を開いたことをうれしく思います」(羽生善治四冠)、「プロ相手に公式戦であれだけの実績があるので、編入試験の形になって良かったです」(佐藤康光棋聖)など、有力棋士も賛意を表明した。私こと田丸も賛成票を投じた。

瀬川は当時奨励会の佐藤天彦らと対局した

 瀬川の棋士編入試験は、6局のうち3勝すれば合格と決まった。

【次ページ】 今泉、折田は奨励会在籍経験あり。一方で小山は…

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