バレーボールPRESSBACK NUMBER
石川祐希が“最高の仲間”と本気で挑んだ金メダル「バレーボールをさらに極めます」叶わなかった…それでも3年間で“世界との距離”は縮まった
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byTetsuya Higasikawa/JMPA
posted2024/08/11 11:00
エース、キャプテンとしての重圧を背負い続けた石川祐希(28歳)。試合後、共に歩んできた仲間たちに感謝の言葉を述べた
アルゼンチン戦は3-1で勝って今大会初白星。石川もブロック時に手をグーにする頭脳的なプレーを見せるなど多彩な攻撃で相手を翻弄した。
ただ、見ていて気になったのは石川の調子だ。スパイクの状態が上がらず、どこか歯がゆさを感じているようだった。そこに笑顔はなく、険しい表情だった。
「自分もやっていて、なかなか感覚というか……(調子が)上がっていないというか。体の切れも、すごく疲れているのかなと考えたりして」
それでもチームを牽引するキャプテンとして、エースとしてプレーし続けなければならない。違和感を覚えながらも、「どんな状況においても。自らのパフォーマンスを高く維持できるよう」に努める姿が印象的だった。
だが苦悩は予選ラウンド最終戦のアメリカ戦でも続く。
自分のプレーが勝敗を左右させる
日本は1-3で敗れたがアメリカから1セット獲得したため、上位8チームによる決勝トーナメント進出が決定。しかし、この試合でも石川自身は調子が上がらない。第3、4セットはスタートのメンバーから外れ、ベンチに下がった。かわりにコートに入った大塚達宣が起爆剤となり、日本は第3セットを奪った。
「いつもだったら(トスを)上げてもらえているところでクイックを使って、(相手ブロックの)ワンタッチで切り替えされて、点を取られて。乗り切れない場面が多かった。そこで(トスを)持ってきてもらえるような、託してもらえるようにしないといけない」
決勝トーナメントでは、パワーもスピードも、ブロックディフェンスも強力なベストメンバーのアメリカと同等、いや、それ以上のチームとの対戦が待っている。
なかなか調子が上がりきらない自身のプレーに悔しさを滲ませながらも、その状況をなんとか打開しようと模索しているようだった。自分のプレーが勝敗を左右することも十分すぎるほど理解している。
石川の想定通り、8月5日の準々決勝イタリア戦は、1点を争う一進一退の白熱した攻防が続いた。