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石川祐希が“最高の仲間”と本気で挑んだ金メダル「バレーボールをさらに極めます」叶わなかった…それでも3年間で“世界との距離”は縮まった
posted2024/08/11 11:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Tetsuya Higasikawa/JMPA
世界ランク1位と2位の顔合わせとなった、パリ五輪男子バレーボール決勝戦。
この舞台を目指してきた日本代表の選手たちは、そして石川祐希は、この試合をどんな思いで眺めていたのだろうか――。
ベスト8に終わった2021年東京五輪。準々決勝のブラジル戦に敗れた後、キャプテンの石川は仲間を集め、「この悔しさを忘れず次につなげるしかない。次また進んで行こう」と気丈に声をかけ、前を向いた。ただ、ベンチに戻ると悔しさで涙が溢れた。
あれから3年。チームは経験を重ねる度に逞しさを増し、世界の強豪とも台頭に戦えるチームへと成長した。
そして迎えたパリ五輪。
コーチ時代を含めると日本代表で8年目のシーズンとなるフィリップ・ブラン監督ともこれが一緒に戦う最後の大会となる。集大成と位置付けたこの五輪は本気で金メダルをターゲットにして、挑んできた。
だが、メダルという高い壁は越えることができなかった。
「地に足をつけないと足元をすくわれる」
金メダルという目標は掲げていたが、石川は「メダルのチャンスはあるけれど、簡単ではないし、必ず勝てるという保証もない。地に足をつけないと足元をすくわれる」とどんなときも冷静さを失わず、自分たちを俯瞰してみることも忘れなかった。
開会式翌日にはギョルギ・グロゼルを擁するドイツと対戦。初戦の緊張からか硬さがが目立った。日本は要所でミスが出てしまい、2-3と逆転負け。黒星からのスタートとなった。
この敗戦で予選突破を諦めている選手は誰一人としていなかったが、「切り替える」という言葉を発しながらも、やはりどこかショックを受けている様子だった。
ただ、それでも試合は続いていく。4日後のアルゼンチン戦は絶対に負けられない。自らにも言い聞かせるようにミックスゾーンで石川は力強くこう言い切った。
「もちろん立て直します。ここから上がっていくしかないと思っているし、これで終わるようなメンバーではないので。いいパフォーマンスを見せられるよう、自分たちのために戦っていきます」