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女子スケボー「笑顔の演技」で話題の16歳“鬼姫”草木ひなのとは何者か?…「新世代の突き上げ」「度重なるケガ」五輪出場のウラにあった波乱万丈
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/09 11:04
初出場の五輪で決勝進出を果たした「鬼姫」こと16歳の草木ひなの。笑顔溢れる滑りで多くのファンの心を掴んだ
「1から10まで教えてもらう」から「足りないところを補填してもらう」ようになったのだ。
オリジナリティが重要視されるスケートボードの世界において、全てを教えてもらっては、リスペクトを得ることはできない。
そして「この技はこうやってこうだよね」「合ってるけど、もっと身体は後ろだよ」とフィーリングで意見交換ができるようになった。自分で考えたベースがあって、そこにプロのアドバイスをもらったことで、ひとつのトリックを覚える形が出来上がったのだ。
さらにAXIS SKATEBOARD PARKにはアールと呼ばれる滑走面が湾曲したセクションが数多くあるのも大きかった。
「ココで出来たら次はココだよね」というステップが踏めるので、より高いところ、よりクイックで癖のあるところと、どんどん皆が意地になってハードルを上げていき、それを次々とクリアしていく女の子になっていった。
本人もまたそのように煽られながらやるのがものすごく楽しかった。そうして数多くのトリックを習得。気付いた頃には周囲のスケートボーダーも真似できないようなワールドクラスにまで成長していたのだ。
コロナ禍以降、飛ぶ鳥落とす勢いで躍進
すると当然コンテストでも結果が出るようになる。
草木の名前が一躍全国区となったのは2021年の全日本選手権初優勝だろう。コロナ禍を経て久しぶりに開催されたコンテストということもあり、期待の新星として大々的に報じられた。そこを機に彼女は飛ぶ鳥を落とす勢いでスターへの階段を駆け上がっていったのだ。
2022年も手首の骨折はあったものの、同大会を危なげなく制すると翌年初頭には満を持して世界デビュー。初出場ながら4位という結果を残す。
当時の心境を聞いた時も、手応えと共に自身の課題も口にしていたので、このままの勢いでオリンピック出場どころかメダルまで獲得してしまうのでは? と思っていた。
しかし、「好事魔多し」という言葉があるように、パリまでの道は決して平坦ではなかった。