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女子スケボー「笑顔の演技」で話題の16歳“鬼姫”草木ひなのとは何者か?…「新世代の突き上げ」「度重なるケガ」五輪出場のウラにあった波乱万丈
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/09 11:04
初出場の五輪で決勝進出を果たした「鬼姫」こと16歳の草木ひなの。笑顔溢れる滑りで多くのファンの心を掴んだ
足首の靭帯損傷、そしてX Gamesカリフォルニア大会の辞退と上り調子だった勢いに徐々に陰りが見え始めてきたのだ。
もちろん全てが自分の思うようにいく人など、この世に存在しない。ただ、彼女の場合は、コロナ禍も相まって出場経験も豊富でない中で注目を浴び、しかもその全てが結果につながっていた。浮き沈みすら経験することなく、「楽しい!」だけでジェットコースターのような日々を駆け抜けてきたのだ。その分一旦歯車が狂い出すと、1人では抱えきれなくなっていった。
女子のスケートボード界はとにかく若年層の突き上げが凄まじい。
ケガをして活動できない時期が続けば、すぐに若い選手が頭角を現してくる。実際に今回も彼女よりも年下の13歳、長谷川瑞穂が急成長を遂げ、国際舞台でも注目を集めるようになっていた。そしてそれは、四十住さくらが上り調子だった草木に対して感じたものと同じと言えるのではないだろうか。
マネージャーが付き、さらに大きなスポンサーがつけば、活動はサポートしてもらえるものの重圧は大きくなっていく。その頃にはもう以前のような思い切りの良さは消えていた。
5月の五輪予選では準決勝敗退…復活の理由は?
スケートボードは繊細な乗り物だ。
自身が「イケる!」と思った時は不思議と乗れたり、新たなトリックが習得できたりする。しかし落ち込んでいるときは失敗するどころかケガにも繋がりやすい。メンタルがものすごく重要なのだ。一旦スランプに陥ると、元に戻すのはベテランとて容易ではない。特に彼女のように初めて経験するものであれば尚更だろう。
実際に5月の上海で行われた五輪予選では、3枠の代表の座を争うライバルが好結果を残した一方、本人は準決勝敗退に終わっている。「このままではマズイ」その空気は筆者自身もにわかに感じていた。
では、なぜそこからわずか3カ月足らずでいつもの笑顔を取り戻せたのか?
原点に返ることにしたのだ。
存在が大きくなりすぎた草木に対し、仲間内にも走っていた緊張を解きほぐし、以前のように仲間内で盛り上げて草木を世界大会に送り出してあげる形に戻そう。