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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
中村憲剛の総括「あのスペインと10回やって5回勝つレベルに」パリ五輪代表“0対3の現実”をどう受け止めるべきか?「日本が良くなったからこそ…」
posted2024/08/07 11:03
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph by
Takuya Kaneko/JMPA
試合から数日が経っても、悔しさがなおくすぶる。
パリ五輪の準々決勝で、日本はスペインに0対3で敗れた。チャンスはあった。VARで取り消されたが、ゴールネットを揺らした。セットプレーからもチャンスを作った。しかし──。
彼我の違いは何だったのか。先ごろS級ライセンスを取得した元日本代表MF中村憲剛氏に聞く。(全2回の1回目/後編へ)
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「0対3」というスコアは偶然ではない
試合の場面、場面を切り取ると、「あそこで決めていれば」という思いが募るのではないでしょうか。決定機を作れていましたし、「決めきる個」の重要性を改めて唱える結果だったかもしれません。しかし、試合を見返すと「個の重要性」だけではなく、「4-3-3」というシステムの「積み重ねの違い」を、感じずにいられませんでした。
惜しい試合だったことは間違いありません。ただ、今回だけではなくW杯も含めて世界大会で恒常的に上位を目指すとなれば、日本にはあのスペインと10回やって5回勝つレベルに到達することが求められます。その観点で試合を見ると、印象がまた変わってきます。4-3-3の本家と言ってもいいスペインに、同じ4-3-3で立ち向かうなら、国単位で長い時間をかけて準備や強化を進めないと難しいのでは、と率直に感じました。
たとえば、スペインの1点目です。山本理仁から三戸舜介へのパスをカットされ、トランジションから一気に決められましたが、あの瞬間はボランチの脇のスペースが空いていて、センターバックもフェルミン・ロペスのところまでは出ていけない絶妙な場所で受けられ、シュートを決められました。4-3-3の構造上のウィークポイントを、スペインは確実に突いてきました。彼らはこの形で長い時間プレーしているだけに、どこにスキがあるのかをよく分かっているわけです。
2失点目、3失点目はCKからですが、それもきっちりとした分析に基づいている。そのうえで、「個」でひとり剥がすとか、ユニットでプレスをかいくぐっていくといったように、一人ひとりが自立しているだけでなく、グループとしてもチームとしても自立している。こちらにもチャンスがあり、決めることができていれば、という部分があったにせよ、偶発的なものが重なって0対3になったわけではなかったのです。