甲子園の風BACK NUMBER
高校野球“7回制”の賛否割れた…金足農から大阪桐蔭まで“監督ポツリ”意外な本音「9回制より守りたいのは…」「部員減の高校チャンス」揺れる現場
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/07 06:01
2018年夏の甲子園準優勝校・金足農業(写真)をはじめ大阪桐蔭、花咲徳栄の監督たちに「7回制」の本音を聞いた
「現実問題として、全国の高校で部員の少なさに悩む指導者も多い。今では9人集めるのだけでも難しいと。甲子園に出るようなチームは人が集まるからいいんですけど、実際ね……」
岩井が語っているのは、少子化に伴う高校野球二極化への危機感だ。2020年から高校野球では、ピッチャーの疲労を軽減するために、投手1人につき1週間で500球以内という球数制限が導入されている。これにより全国の高校は、絶対エースに依存せずに、複数の好投手を育てることが急務になった。
「部員の人数的に、複数のピッチャーを持てないチームもあるんですよ。今年はひとり優れたピッチャーがいて甲子園を目指せる……というチームなのに、最後まで投げられないという状況が生まれてしまう。現実的に高校野球全体を考えれば、7回制にいい面もある」
絶対に変えないでほしい…「開催地は甲子園」の声
開催場所、開催時期、9回制。最も変えないでほしいものを聞くと、即答だった。
「(場所が)甲子園から変わるっていうのはありえないと思います。球場の形、土の匂い、浜風……あそこだけ、地場が違うんじゃないかと感じるくらい。世界遺産と同じです。僕はそう思っているので」
栃木代表の進学校、石橋の福田博之監督(58歳)も同じ意見だ。加えてその言葉には、夏の甲子園「初出場」という実感がこもっていた。
「可能であれば9回がいいです。高校野球の本来の姿なのかなと思うので。でも、どれを一番守ってほしいかと聞かれれば、甲子園でやることです。あそこでやりたいっていうのが選手や我々の希望です」
長崎は創成館の稙田龍生監督(60歳)も、熊本工の田島圭介監督(43歳)も同意見だった。甲子園開催は変えないでほしい、と。とはいえ監督の世代によっても違うのではないか。今大会の出場校、最年少監督の宮崎商・橋口光朗監督(36歳)に尋ねる。「(同年代の)森大さんとかいればいいんですけど」と、同じく青年監督として知られる浦和学院の監督の名前を出しながら、消え入るような声で本音を漏らす。