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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「橋本大輝が人差し指を口に…」「笑顔だったアメリカ代表」実は萱和磨&谷川航のコーチ経験も…“体操のお兄さん”福尾誠が見たパリ五輪「名場面」
text by
福尾誠Maokoto Fukuo
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2024/08/01 11:36
人気番組『おかあさんといっしょ』の体操のお兄さんだった福尾誠さん。萱選手や谷川選手のコーチも務めた福尾さんが見たパリ五輪の名シーンとは
体操競技の演技は10個以上の技で構成され、試技中の10個の技のみ難度点の認定がなされます。ただ、技の認定がなされない技もすべて出来栄えの採点対象となります。しかし大技を磨き上げていくことを優先したい選手は多いはずです。ただ、日本はそうではなく、難度点の認定がなされない技まで一挙手一投足の美しさにこだわり、鍛え上げてきていました。
それは、内村選手はもちろん、今回の五輪の選手選考会で出来栄えの点数が最高得点だった田中佑典選手(田中体操クラブ)のようなベテラン選手たちが積み上げてきたものです。田中選手の基礎的な動きというのは本当に美しくて、どの選手も憧れていた「教科書」のような動作だったと思います。
日本が誇る「基礎」のハイレベルさ
そもそも体操競技は、技の進化が時代とともに急激に進みます。
そのため、コーチや指導者であっても選手と同じ技をやることはできないケースがほとんどです。実際に僕が順大のコーチを務めていた時も、萱選手や谷川選手の方が技術面では圧倒的に上でした。
では、指導者はどういうところを伝えるのかというと、つきつめるとその「基礎」の部分なんですよね。どんなに技の難易度が上がっても、最後はその基礎に戻ってくる。手先や足先の隅々まで動きを意識して演技をしていくことが日本体操の特徴なのだと思います。そのスタイルを最後の最後まで貫いて諦めなかった結果が、金メダルにつながったのだと感じています。
僕は2004年のアテネ五輪団体の金メダルを見て、あのカッコよさに憧れて体操競技に全力で取り組みました。今回のパリでの劇的な勝利を見て、選手たちに憧れた子どもたちも多かったのではないでしょうか。彼らがまた新たな日本の体操の歴史を紡いでいってくれることを楽しみにしたいですね。
福尾誠(ふくおまこと)
1992年1月11日生まれ 東京都出身。2019年4月より、NHKEテレ「おかあさんといっしょ」第12代体操のお兄さんとして4年間活動。2023年4月をもって同番組を卒業。幼少期から体操競技を始め、大学卒業まで選手として活躍。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程を修了し、博士号を取得。現在は、ステージでの公演やイベント・各種メディアを通じて、からだを動かすことの楽しさを表現している。 福尾誠 公式Xアカウント @fukuo_makoto