目についた選手同士の「リスペクト」

　銀メダルの中国チームも、エースの張博恒選手が鉄棒の演技の前後で橋本大輝選手と軽くハグをしていたり、他国も含めて選手同士のリスペクトがすごく感じられました。

　チームメイトの落下で首位陥落という大きな衝撃を受けた後にも関わらず、敵味方関係なく周囲への気遣いを忘れなかった張選手の姿はとても美しかったです。逆に橋本選手も張選手の演技前に、ざわつく会場のファンに静粛にするよう呼びかけたシーンが話題になっていましたね。

中国・張の鉄棒の演技前に会場のファンに配慮を求めた橋本　©Naoya Sanuki/JMPA

　体操競技というのは個人の技術の勝負になるので、「自分にできない技が彼にはできる」「彼にできない技を自分ができる」といったプライドや、リスペクトの気持ちがすごく強いんです。対戦型の競技ではなくて、個々の技術を争うという競技特性もあって、それぞれの選手が自分にできない技術を持っている選手をとても尊敬している。

　そういうリスペクトがあるからこそ、他国の選手とのハイタッチやハグなども自然と起きるのだと思います。選手間でのやり取りがフレンドリーに見えるのもそういう要素が大きいのかもしれません。

中国のエース・張と橋本のハグ　©JIJI PRESS

　また、今回の日本チームは“キング”内村航平選手引退後の初めての五輪でした。

　ある意味で一時代が終わった中で、今回の金メダルを獲得できたのは感慨深いものがありましたし、日本チームの層の厚さを世界に証明できたのではないかと思います。とはいえ、今回のチームだけではなく、これまで受け継がれてきた日本チームの“美しい体操”の「基礎」の部分の積み上げが最後の小さなポイント差にもつながったとも思います。

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