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「練習中もしゃべってばかり」母・美香子さんが明かす柔道・ウルフアロンの原点「家族の中でアロンだけが英語をしゃべれないので(笑)」
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byAFLO
posted2024/08/01 17:00
連覇を目指す柔道男子100kg級のウルフアロン
「親が期待するのは間違いかな、と」
とにかく負けず嫌いなんです。小学生の時も講道館は週に2回通っていたけど、強い子たちは毎日通っていたからアロンも毎日行き始めて。大きな大会に選ばれたいと思ったら「これから俺居残り練習やるから」と言い出す。みんな自分で決めていました。
柔道をいつまでやるかわからないと思っていましたが、「柔道でこうなって欲しい。ああなって欲しい」という期待はしていませんでした。親が期待するのは間違いかなと思っていたので、本人が全力を出して頑張っているのを、全力で応援するだけでした。だから本当にアロンの試合を見る時は、ずっとドキドキし過ぎて楽しめなかったんです。でも五輪が終わってやっと「あぁ、私は本当にあの子の柔道をしている姿を見るのが好きだったんだな」と感じました。「これからは楽しんで見られるかもしれないな」と。
英語を話せないのはアロンだけ
今振り返れば、あの子の恩師は関わってくれたすべての先生かなと思います。特に講道館は曜日ごとに指導する先生が違うので、町道場のように指導者の色がつくことがなくて良かったと思います。特に最初に見てくれた向井幹博先生は小学生にも「頭を使いながら試合をしなさい」という方で、試合中でも「よーく考えてやれよ」と声をかけていて。それが今につながっていると思います。
将来の心配もあったので大学の時は「教職だけは取っておいてね」といったけど、ゼロか100かのアロンは結局取らなくて……。引退した後は、五輪の為に休学している大学院には復学してほしいですね。あとは家族の中でアロンだけが英語を話せないので(笑)、柔道にかかわる中でも必要になるだろうから英語の勉強はぜひしてほしいですね。今あの子に期待するのは、それだけです。