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なぜマニー・パッキャオの“RIZIN初登場”は「期待外れ」に終わったのか? 舞台裏では「いいチューンナップに…」安保瑠輝也戦を徹底検証
posted2024/08/01 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
7月28日の『超RIZIN.3』(さいたまスーパーアリーナ)で観客を最も驚かせたのは、朝倉未来をKOした平本蓮だろう。
もちろん、いい意味での驚きだ。一方で悪い意味での驚きもあった。つまりは期待外れ。そう感じさせたのはマニー・パッキャオである。
ボクシングで8階級にわたり活躍し6階級の世界王座を獲得。ボクシング界のレジェンドであり、アジア最大のスポーツヒーローの1人と言っていい。そんなパッキャオがRIZIN初登場を果たしたのだ。
かつて参戦したフロイド・メイウェザーと同じく3分3ラウンド、ボクシングに準ずるルール。KOで決着がつかなかった場合は判定なしでドローとなるのもメイウェザーと同じだ。対戦したのは元K-1王者の安保瑠輝也。
下馬評は圧倒的にパッキャオ有利だった。ボクシングで闘ったらボクサーが有利に決まっている。ましてパッキャオのようなトップ中のトップに、他ジャンルの選手が敵うわけがないと。
臆さない安保、後手に回ったパッキャオ
45歳という年齢を差し引いても、久しぶりの実戦であっても、パッキャオと安保には埋められない実力差があると多くの人間が考えていた。メイウェザーがRIZINで那須川天心、朝倉未来をKOしていることからも、その道を極めた者の強みは否定できなかった。
ところが、だ。闘いは予想外の展開となる。1ラウンドから積極的にパンチを繰り出すのは安保。超のつくビッグネームに対しても臆するところがない。
パッキャオは徐々にペースを上げていくものの、後手に回りがちな印象だ。解説を務めた内藤大助(元WBC世界フライ級王者)は、2ラウンドにこう指摘している。
「パッキャオはもうちょっと手(数)がほしいですね。安保選手は(もっと)いってもいい」
この状態のパッキャオなら攻め込んでもカウンターを取られる危険性が少ないということだろう。3ラウンドには手数も増えたパッキャオ。パンチの精度では上回っていたようにも思えるが、全体として攻めていたのは安保だ。判定なしのドロー。レジェンドは門外漢に苦しめられた。
ダメージによるものではないが、バランスを崩し足がもつれる場面もあった。過去のパッキャオのファイトに胸躍らせてきた者からすれば完全な期待外れだった。いったいなぜこうなったのか。