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卓球まさかの大波乱「これはやばいぞ…」張本智和と早田ひなが“謎の北朝鮮ペア”に完敗、現地で何が起きていた?「早田は一瞬、笑みを見せて…」
posted2024/07/28 17:55
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
謎の転校生が球技大会でいきなり活躍を見せる。学園ドラマならよくある。現実にはあまりない。ただ、オリンピックでは似たようなことがたまにある。
世界ランク2位の張本智和と早田ひなの卓球混合ダブルス「はりひな」ペアが、パリ五輪の初戦で敗れた。前回、日本が金メダルを獲得した同種目。ゲームカウントはまさかの1-4。相手は北朝鮮の李正植(リ・ジョンシク)と金琴英(キム・クンヨン)。この名前を聞いてどんな選手かわかるとしたら、よほどの卓球好きだろう。
第3ゲーム、日本人記者がつぶやいた「これはやばいぞ…」
世界ランクはなし。五輪出場が確実だった張本・早田ペアが回避したチェコでの世界予選を勝ち上がった“下剋上組”だ。トーナメント表を見ると、日本のペアには第2シードを意味する(2)の数字がついているのに対して、北朝鮮ペアの右側には(16)。シングル・団体戦にも出場する張本と早田に対して、初対戦の格下2人は混合ダブルスに出場するためだけにパリへやってきた。
日本では「未知の脅威」と報じられたが、「未見」ではなかった。コートサイドのベンチから見守った男子監督の田勢邦史がこう明かす。
「初めての対戦にはなりますけど、五輪予選での映像は見ていました。思っている特徴はあったけど、実際にやってみないとわからない。女の子のほうを気にしていたのですが、男の子のほうが意外と思い切って、(張本)智和のほうを全部カウンターしてきて、ミスもしなかったですね……」
粒高ラバーの「女の子」とフォアハンド主体の「男の子」。初顔合わせで、馴染みがない相手。対戦してみると、想定外に強かった。
第1ゲーム、張本・早田ペアは一気に6点を取られる。あっさり5-11で落とすも、第2ゲームは11-7で取り返す。ここから仕切り直しかと思いきや3ゲーム目も攻め立てられ、相手サーブでは3球目攻撃を立て続けに食らう。1-7となり日本人の記者がつぶやく。
「これはやばいぞ……」
4-11で第3ゲームを相手に渡す。歯車は1ゲーム目から狂い始めていた。
「初対戦で男女が替わるので、基本初顔合わせのミックスって1-1になりやすいんです。1ゲーム目、あっさり負けてしまったので、競っていたら情報が入ったんですけど……。情報がないなかで、3ゲーム目をどう戦うかという状況になってしまった。1ゲーム目の立ち上がりが悪かったのが大きかったです」(田勢監督)