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選手生命の危機を救った“絶対に否定しない夫”と“最強レジェンド”「3度目の五輪はスゴい」柔道・高市未来が逃したメダルの代わりに得たもの
posted2024/08/01 06:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Tetsuya Higashikawa/JMPA
7月30日、パリ五輪柔道男子81kg級で永瀬貴規が金メダルを獲得し、五輪2連覇を達成した。リオ、東京、パリと3大会連続での表彰台は、女子48kg級の谷亮子と男子60kg級で3連覇を果たした野村忠宏以来、史上3人目の快挙だった。
永瀬は終始厳しい組み手で相手を攻め続け、最後は谷落としで勝負を決めると、この日も満員だった観客は一斉に立ち上がり、大きな歓声と拍手で祝福。日本人が勝てないと言われた81kg級で圧倒的な力を見せつけ、目の肥えた柔道大国のフランス人たちにも認めさせた。
一方、対照的だったのが、同日の女子63kg級に登場した高市未来だ。
2回戦敗退「もうこれ以上、頑張れない」
高市もまた、今回が3度目の五輪だった。リオ、東京は「田代」として出場。結婚を経て、「高市」として五輪に帰ってきた。
初戦はキューバのマイリン・デルトロカルバハルに横四方固めで勝利。しかし、2回戦でクロアチアのカタリナ・クリシュトと対戦し、延長戦の末、背負い投げで技ありを奪われた。早すぎる敗戦だった。
「なにをやっているんだっていう気持ちと、でも、もうこれ以上、頑張れないという気持ちが混じっています」
涙ながらに語る高市は「これ以上は無理だ」というくらい、今の自分ができる100%の準備を行ってきた。
「ワクワクする気持ちもあれば、苦しくて、逃げ出したくなるときもあったし、本当に怖いなと思ったこともありました」
過去に2度の五輪を経験しても……いや、むしろ2度も経験したからこそ、そう感じたのかもしれない。