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「コクボやフジタ、ホソヤにヤマモト、タカイも…メダル候補だ」トルシエが“パリ五輪世代ベタボメ”の理由「バルサ的な形ではない。だが」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byMutsu Kawamori
posted2024/07/30 19:18
マリ戦、決勝ゴールに会心の表情を浮かべる山本理仁(7番)ら日本代表イレブン。トルシエもこのチームを高く評価している
「日本のプレス戦略、もっと言えばカウンタープレスに対する戦略が――ボールを奪われるや否やカウンタープレスをかける戦略がこの試合の鍵で、相手のミスを誘った。
次にボールを保持した際には、常にスピーディなトランジションがあった。山田楓喜や斉藤光毅、細谷真大、荒木遼太郎らを通してのトランジションだ。藤田譲瑠チマと山本理仁、関根大輝と大畑歩夢に支えられながら。日本は瞬く間に5~6人が相手ペナルティエリアに現れることができた。それだけ速くゴールに到達できたのは、トランジションのクオリティの高さに他ならない。ゴールのチャンスはさほど多くはなかったが、それでもトランジションによる得点機を作り出した。
そして最後に留意すべき点は、ボールを保持した際に後方で回して、相手を動かしたことだ。マリの選手にボールを追わせたので、彼らはフィジカルの優位を発揮できず、またプレスもかけられなかった。
だから日本は……試合は拮抗していたといえるが、戦略が違いを作り出した。日本の勝利に関して不名誉なことは何もない。マリも勝つことは可能だったが、実際に勝ったのは日本だった。それは繰り返すが、日本の素晴らしいコレクティブな連帯感と統一感――これこそが、まさにこのチームの心臓と言えるが――それが90分間プレスをかけ続けることを可能にし。瞬く間にゴール前に殺到する強さを生んだ」
日本はメダルの有力候補であるといえる
――それが山本の決勝ゴールを呼び込んだと言えます。
「また同時に、冷静に後方でボールを回し、決してパニックに陥らない冷静さも兼ね備えている。そうしたすべての要素が、マリという素晴らしいチームに対して機能した。マリはメダルを獲得してもおかしくないチームだ。そのマリに、日本は文句のつけようのない勝利を収めた。日本はメダルの有力候補であるといえる」
――その通りですが、後半は少し拮抗しました。
「たしかに少し拮抗した。そして日本は試合の流れに反してゴールを決めた。試合の核心に反して、ということだ。日本がゲームを支配している時間帯の得点ではなかった。
しかし後半に入ってからも、日本の守備の連帯感は失われてはいなかった。日本はとてもよく守っていた。マリは後半になって攻撃の強度を上げたが、日本は低い位置にブロックを敷いて、ボール保持者には圧力をかけ続けた。だからマリはボールを支配しながらも、自分たちが思うようなプレーはできなかった。パスも繋がらず決定的なシュートも打てなかった。それこそが強固なブロックを敷ける日本のコレクティブな連帯感の力だった」
支配率が勝利の基準ではない。日本はよく理解している
――これだけのエネルギーと集中力を注ぎ込んで、結果として勝利を得られたことは大きかったのではありませんか。引き分けや負けだったら、後に与える精神的な影響が異なっていたと思います。