ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「本当に素晴らしい」パリ五輪世代“アンリ監督の本音評価”をフランス語で聞いた取材記者、驚く「なでしこもフォロー」「我々に問題を…」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byKoji Watanabe/Getty Images
posted2024/07/23 17:34
パリ五輪直前の親善試合で笑顔の大岩剛監督とティエリ・アンリ監督
「それほどの敬意を払うべき相手に対して、われわれはこれまでと同様のチャンスを作ることが出来た。そこは最初の2試合とまったく同様だった。同じ結果は実現できなかったが、日本サッカーについて以前から知っている私にとっては――若いチームについてはずっと見続けているし、女子(なでしこジャパン)についてはA代表も含めてフォローしている。クレールフォンテーンのディレクター(註。クロード・デュソー。福島のJFAアカデミーの初代校長。アンリ自身もクレールフォンテーンのナショナルトレセン出身)が日本に要請されて彼らの手助けをしたのも知っている。彼らの進歩には大きな好感を抱いている」
話は飛ぶが、森保一監督の日本サッカーへの最大の貢献のひとつは、守備を文化として日本に根づかせたことだと思っている。
相手にボールを支配され、ポゼッションでイニシアチブは取れなくとも、守備でバランスを取ることによりゲームをコントロールする。ジャカルタのアジア大会やUAEのアジアカップなどで、アジア相手に幾度となく実践し、その成果がカタールW杯でドイツとスペイン相手に結実した日本独自のサッカー文化である。
大岩監督から感じるトルシエや森保采配と同じ理念とは
理念の端緒はフィリップ・トルシエにある。トルシエのフラット3は、弱小国が強豪相手にも守備でバランスを取りコントロールするシステムであった。攻撃では劣っていても守備で均衡を作り出せる。余裕がないから守るのではなく、余裕を持って守り、そこから攻撃に転じる。それまでの日本サッカーには、まったくない考え方であった。
大岩も、森保と同じ理念を継承しているように見える。守ることは決してネガティブではない。そこからいかに攻撃に転じていくのかが重要であるのだと。フランス戦での藤田の得点は、それが結実したものでもあった。
後半の日本は、前半に比べ明らかにプレーのスピードが落ちた。それはフィジカルコンディションも含め、選手招集の状況に鑑みて仕方のないことであった。
日本は最後まで我々に問題を提起し続けた
大岩はフランス戦の意義をこう語る。
「たぶん選手たちはもっと出来たと思っているんじゃないですかね、自分たちが主導権を握るという意味では。受け身のプレーが多かったので、その部分ではもう少しやれたのではないかと。あのスピードと強さにこの1試合で慣れたので、次の試合ではそれを生かして欲しいなと思います」
一方、アンリは後半の日本をこう見ていた。