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現役引退から9年…フィギュアスケート界の貴公子と言われた小塚崇彦が重機の免許を取る理由「重機の習得プロセスはジャンプに似ている」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTadashi Hosoda

posted2024/06/24 17:03

現役引退から9年…フィギュアスケート界の貴公子と言われた小塚崇彦が重機の免許を取る理由「重機の習得プロセスはジャンプに似ている」<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

「日本財団 重機講習会」に参加して重機を操るフィギュアスケート元日本代表の小塚崇彦。現役引退から9年、その理由とは?

「小さいころから股関節の亜脱臼を繰り返していた」という小塚さんが、現役時代から悩まされていたのは右股関節の『先天性臼蓋 (きゅうがい) 形成不全』という病気。

 引退から数年くらいはアイスショーで滑る機会も少なくなかったが、滑り続けるにつれて状態が悪化し、現在は「あまり良い状態ではない」という。

「(激しく)走ったり(長距離を)歩いたりはできないですし、かがもうとすると右の股関節が完全には折れ曲がらない状態になっています。アイスショーにもっと出れば? と言われるんですが、難しいんです」

 ここ数年は再生医療も受けている。しかし、状態は芳しくない。「技術が進んで股関節を元の形に戻してもらい、またスケートを滑れるようになれば、僕の感覚や技術を実際に滑って見せてあげられるのですが、今はできないのがもどかしいですね」

 ただ、小塚さんは悲嘆に暮れているわけではない。

「股関節が柔らかいからこそ出来ていたこともあって、『イーグル』もそのひとつ。だから僕は、股関節が緩かったことに関して否定するのは嫌。フィギュアスケートをやってきた勲章だと思っています」

できないことを重機が助けてくれる

 こういった信念を持っているからこそ、社会貢献なり重機免許取得なりといった新たな道へ足を踏み出せるのだろう。

「自分自身、体が(自由に)動けていたらHEROsの社会貢献にここまで関わると考えなかったと思います。今は重機免許を取ることによって、できないことを重機が助けてくれるのではという思いがあります」

 そのうえで、フィギュアスケートに対する思い入れの強さをこのように表現する。

「自分のできることという意味では、大ちゃん(高橋大輔さん)や(浅田)真央がアイスショーをやっているように、それぞれができることをやっていると思っています。あの濃い世代の一人一人が個性を持ってやっていますよね。すごくいい時代に僕はスケートをできたなと思うんです。僕は、社会貢献することを恥ずかしがったりするのは違うと思っていますよ」

 青空の下で広がるさわやかな笑みに、誇らしさが浮かんでいた。

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