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現役引退から9年…フィギュアスケート界の貴公子と言われた小塚崇彦が重機の免許を取る理由「重機の習得プロセスはジャンプに似ている」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTadashi Hosoda
posted2024/06/24 17:03
「日本財団 重機講習会」に参加して重機を操るフィギュアスケート元日本代表の小塚崇彦。現役引退から9年、その理由とは?
指導スタッフによると、トップアスリートの技能習得スピードは一般人の3倍以上というが、小塚さんは「プロの方の動かし方を見ると、人の手が動いているかのよう。僕たちはまだ使えない」と苦笑い。それでも、「重機の操作を習得していくプロセスはスポーツをやっていた時と似ている。色々なことが順序立ててできるようになっていく嬉しさは、ジャンプができるようになるとか、回転が多くなるとか、そういうことと凄く似ている」と語る様子は生き生きとしている。
各競技の日本代表経験者と語り合う時間も
今回の講習には元プロ野球選手の鳥谷敬さん、元サッカー選手の田中隼磨さん、元ラグビー選手の畠山健介さん、元体操選手の寺本明日香さんら、各競技で日本代表経験のあるアスリートが参加した。1泊2日の“合宿免許”とあって夜には酒を酌み交わしてそれぞれの思いを語り合う濃い時間もあった。
合宿中の6月3日早朝には能登地方で規模の大きな地震が起き、小塚さんたちが宿泊していた場所も「震度3くらいの揺れがあった」という。そこであらためて確認したのは災害支援への思いだ。
「僕は愛知に住んでいるので、東海大地震や南海トラフ地震がいつ起こるかわからないと言われていて不安な状態にあります。そういう中で、重機を動かせたりガレキの撤去をできたりすれば、いざというときに家族や人の役に立つスキルが一つ備わった状態になる。フィギュアスケートができても、震災が起きた時には跳ぶことも回ることもできないと思うんですよね。被災地に行って、みんなと触れ合って笑顔にするということはできるかもしれないですけど、重機の力を借りていろいろなことをできることは人の役に立てることだと思うんです」
講習会には男性アスリートのほかに、寺本さんをはじめとする女性アスリートや、パラアスリートもいた。多彩な顔ぶれがそろう中で刺激を受けたという小塚さんは、意外な着眼点についても語った。
「重機はパワーがあるので、力のない女性でも、フィギュアスケートをやっていて上半身にそれほど力がない僕のような人も、脚が動かないというパラアスリートも、免許と技術を習得すれば同じように活躍ができるんです。これには、それぞれの障がいに応じた形で競い合えるパラリンピックに近いものを感じました」
現役時代から悩まされた股関節の病気
このような発想に至ったのは、小塚さん自身が右の股関節に「大腿骨頭壊死症」という病気を抱えていることが大きいという。