令和の野球探訪BACK NUMBER
出場校で「部員最少」44人でも大学選手権を連覇…「重要なのは選手の自立」東都2部からわずか5年で青学大が躍進した“納得のワケ”
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2024/06/18 06:00
大学選手権で連覇を達成した青学大野球部。学生コーチやマネージャーを含めた44人という部員数(選手は34名)は、今大会の参加校の中で最も少ない
言葉を大切にする安藤監督は「〇〇切る」という言葉を多く使う。投げ切る、やり切る、守り切る、勝ち切る……など。その真意を問われると「一生懸命やって欲しいんです。応援される人物、チームになって欲しいんです」と語る。
「愛されるチームになってきた」という手応えは着実に掴んでいる。大会前、グラウンドや寮がある相模原キャンパスの近くにあるハンバーグ屋を訪れ、カウンターに座ると「青学の監督さんですよね?」と女将さんに声をかけられた。
「佐々木くんがホームランを打ちましたよね? こないだ店に来た時、ホームランバー(アイス)をあげたのよ。今度からも来た選手たちにあげようと思って」など、選手たちの活躍を我がことのように喜んでいる姿を見た。さらに、大学の関係者からも「頑張ってね」とよく声をかけられると言い、「それが答えですよね」と目を細める。
春を全国2連覇で終え、秋のリーグ戦とその先の全国大会である明治神宮大会では、長い大学野球の歴史の中で史上5校目6回目となる4冠(春・秋それぞれのリーグ戦、全国大会を優勝すること)の期待もかかる。昨年は明治神宮大会の決勝で慶應義塾大に敗れ、あと一歩届かなかった偉業に挑む。
「黄金世代」は秋のドラフトでも要注目
大学選手権決勝の1失点が悪送球とホームベースを空けてしまうボーンヘッドだったことからも分かるように、課題は走攻守それぞれで残る。一方で安藤監督は「勝って反省しようということはよく言っているんです」と、負けて傷を残すのでもなく、勝っても舞い上がるのでもない状況は、よりいっそうの成長に繋がると期待している。
さらに、昨年の常廣羽也斗(広島ドラフト1位指名)や下村海翔(阪神ドラフト1位指名)に続くドラフト上位指名が、西川史礁や佐々木の強打者2人には期待されるなど、華々しい活況は続きそうな気配だ。
かつて、河原井正雄監督のもとで小久保裕紀(ソフトバンク監督)や井口資仁(ロッテ前監督)、石川雅規(ヤクルト)を輩出し一時代を築いた青山学院大は今、その教え子である安藤監督と自立した選手たちのもとで、再び黄金時代を迎えている。