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《阪神ドラフト1位》青学大174cmの“小さなエース”下村海翔が持つ驚異のポテンシャル…日米大学野球では「東都7人衆」で最も活躍&MVPのナゼ
posted2023/10/26 17:27
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
10月26日に行われたプロ野球ドラフト会議で阪神から1位指名を受けた青山学院大の下村海翔。身長174cmと投手としては小柄な部類に入るが、その肉体と精神には無限の可能性が詰まっている。
◆◆◆
「今年は選択肢が多すぎるよ……」
ドラフト会議まで残り10日を切っていた頃、学生野球の聖地・神宮球場であるスカウトが嘆いていた。
選択肢とは「ドラフト1位で誰を選択するか?」だ。
続けて「これだけ1位候補の大学生投手が、しかもみんな東都というのは珍しいよね」と話した。確かに今年は東都大学野球連盟所属の大学に、実に7名ものドラフト1位候補が存在すると言われてきた。
左腕の細野晴希(東洋大)、武内夏暉(國學院大)、右腕の常廣羽也斗(青山学院大)、西舘勇陽(中央大)、西舘昂汰(専修大※2部リーグ)、草加勝(亜細亜大)、そして下村だ。下村以外の6投手は、全員身長180cmを超える。
それでも侍ジャパン大学代表として出場した7月の第44回日米大学野球選手権では、彼ら(※西舘陽、西舘昂は選考で落選)を差し置いて、最も活躍したのが下村だった。
開幕投手の座を掴み、3試合で11イニングを1失点に抑え大会MVP。基本的に日米で交互に行われる日米大学野球において、敵地・米国開催では実に斎藤佑樹(当時早稲田大1年/元日本ハム)を擁した2007年の第36回以来、2回目の優勝という快挙に貢献した。
小柄でも強気な下村のマウンドさばき
アメリカの地で光ったのは強気なマウンドさばきだ。
視察していたNPB球団のスカウトが「プロでも特殊球として通用する」としたカットボールや150キロ前後のストレートなどで、リーチの長いMLB予備軍の打者たちに対して果敢にインコースを突いた。
唯一の失点はアメリカのプロスペクト(有望株選手)ランキングでも上位に入る左打ちのスラッガーであるジャック・カグリオーンに打たれた特大弾のみ。それについても「飛ばされすぎて気持ち良かったです。笑っちゃいました」と、すぐに切り替え、その後は大会通して1点も奪われることはなかった。