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出場校で「部員最少」44人でも大学選手権を連覇…「重要なのは選手の自立」東都2部からわずか5年で青学大が躍進した“納得のワケ”
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2024/06/18 06:00
大学選手権で連覇を達成した青学大野球部。学生コーチやマネージャーを含めた44人という部員数(選手は34名)は、今大会の参加校の中で最も少ない
その中で、全員で動き、全員とコミュニケーションを取ることを大事にした。練習は通常朝5時半から行うようにし、1限の授業がある選手もシートノックまでは必ず受けてから、授業に向かわせた。それまでは朝食後に練習を始め「1限の授業がある日は練習に出なくてよい」となっていた慣習を廃し、必ず全員で練習する時間を取り、指導者と選手がノックや会話を通してコミュニケーションを図ることを日課にした。
高校生のスカウトも「足を運んで、自らの目で見ること」を大事にした。推薦枠はわずかに「8」。目利きの失敗は戦力低下に直結する。なるべくグラウンドを空けず、練習が休みの日に全国各地を精力的に回り、グラウンド上の姿だけでなく、バスから降りてくる姿や道具を率先して運ぶか否かなど、様々な所作を見た上で資質を見極めた。
「選考基準は私が惚れ込んだかどうか。そうじゃないと大事にできないですし、受け入れる側にも責任がありますから」と安藤監督はきっぱり話す。
「指導者が引き上げられるレベルには限界がある」
こうして預かった選手たちには自立を求める。
「指導者が引き上げられるレベルには限界がある。そこから先、どこまで上げていけるかは、彼ら自身だと思うんです」と力を込める。だからこそ「○○するなとか、こうしろ・ああしろと言うのは極力嫌」となるべく選手の考えを否定しない。一方で「良いか悪いかハッキリ言わないといけない時は、決して言葉を濁さない。語尾を大切にしています」と、言い切るようにして、規律も明確にした。
確固たる自立や規律が生まれた時、部員数の少なさはメリットになる。たくさんの対話を通して選手一人ひとりの特徴を掴み、豊富な実戦機会で選手は自らの長所や短所を知ることができるからだ。
チームとしての決め事の徹底も大切にし「徹底のためには納得が必要」と説き、主将にはそのための姿勢を求め、結果として佐々木は「みんなが付いていく主将になりました。口数は多くないけど背中で引っ張れる。我慢強い男です」と成長。チームを自身の成績に左右されず最後まで牽引し続けた。