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「とにかく真面目。いや真面目すぎる」石川真佑を“プラス思考”に変える女子バレー眞鍋政義監督の試み「負のオーラを払拭してやろう」 

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眞鍋政義

眞鍋政義Masayoshi Manabe

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photograph byYuki Suenaga

posted2024/06/20 11:02

「とにかく真面目。いや真面目すぎる」石川真佑を“プラス思考”に変える女子バレー眞鍋政義監督の試み「負のオーラを払拭してやろう」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

「とにかく真面目だった」という女子バレー日本代表の石川真佑をプラス思考に変える眞鍋政義監督の試みとは?

 朝食一番乗りだけは、私も譲れない。翌日からはさらに早く行くことにした。すると、まだ石川は来ていなかった。観察していると、私が来る時間にかかわらず、石川は毎日ぴったり同じ時間に朝食に来る。話を聞いてみたら、石川の行動はすべてルーティンになっていることが分かった。まず朝起きると風呂に入る。それからストレッチ。そして6時40分には朝食。

 そんな調子だから、練習のときも、試合のときも、きっちりルーティンが決まっている。スポーツ心理学でも、ルーティンを守ることで心が落ち着き、集中力が高まると言われている。

 私もルーティンには効果があると思う。とくに“間”があるスポーツでは、メンタル面が重要。バレーボールでは、1ポイントごとにプレーが止まり、そのたびに5秒ぐらい考える時間がある。サーブを打つ前にも、レセプションの前にも時間がある。 そこで思考が乱れると、プレーも狂う。バレーはメンタルに左右される部分が非常に大きいスポーツなのだ。

 マイナス思考の選手にとって、“間”は大敵である。プレーが止まっている間に、「ミスったらどうしよう」と考えてしまうからだ。負のイメージを持つと、次のプレーで はだいたいミスをする。その次のプレーでは、前のミスについて考えてしまい、さらにマイナス思考になる。

 そうやって負のスパイラルに陥ってしまうと、もはやルーティンをやるだけでは復活できなくなる。監督としては選手交代しか打つ手がない。

プラス思考の選手をいかに多く入れるか

 逆に言えば、大事な試合ではプラス思考の選手を一人でも多くコートに入れるのが重要だ。第1章で紹介した江畑幸子などは典型的なプラス思考タイプ。メンタルコーチがアンケートを使って調べてみたところ、過去の代表メンバーではやはり江畑が一番プラス思考だった。

 ちなみに、私もアンケートを受けてみたら、超プラス思考だということが判明した。 たとえば、お祭りで「じゃんけんで勝った人にハワイ旅行をプレゼント」という企画 があったとする。勝ち残ってハワイ旅行をゲットしたら、私は「俺って、なんでこん なにツイてるんだ!」と喜ぶ。逆に負けたらどう思うか? 「こんなところで運を使わずにすんでよかったあ!」と喜ぶ。

 バレーをやるときも、そういうふうに考えればいいのだ。練習で失敗したら、「よかった~ これが試合じゃなくて」と考える。ネーションズリーグで失敗したら、「よかった~ これがオリンピック予選じゃなくて」と思えばいい。いつも選手にはそう言って、なるべくリラックスさせるようにしている。

  ところが、私がいくら「プラス思考でいこう」と言っても、最近の選手にはどうもマイナス思考タイプが多い。メンタルについて勉強したところ、どうやらバレーボールに限らず、いろんなスポーツでそういう傾向があるようだ。とくに20代の女性選手にはマイナス思考が多いと聞く。

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