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「とにかく真面目。いや真面目すぎる」石川真佑を“プラス思考”に変える女子バレー眞鍋政義監督の試み「負のオーラを払拭してやろう」
text by
眞鍋政義Masayoshi Manabe
photograph byYuki Suenaga
posted2024/06/20 11:02
「とにかく真面目だった」という女子バレー日本代表の石川真佑をプラス思考に変える眞鍋政義監督の試みとは?
性格の基本は20歳までに形成されるため、そのあとに思考パターンを変えるのは難しいという。われわれもメンタルコーチの渡辺英児を中心に、いろいろな対策を行っているが、思うような成果は出ていない。
負のオーラを払拭してやろう
私に言わせれば、プラス思考は最も手っ取り早くパフォーマンスを上げられる最高 の手段だ。技術は何カ月、何年もかけて練習しないと向上しないが、気持ちは1秒で 変えられるからだ。でも、マイナス思考の選手にはそれが難しいのである。 「気持ちを切り替えろ!」「プラス思考になれ!」と言うだけではなかなか変わらない。ただ、いちどの成功体験が人を変えることもある。だから、石川にも早いうちに成功体験をさせて、負のオーラを払拭してやろうと考えていた。
そんなとき、VNL2022の初戦で韓国と当たることが決まった。東京オリンピックの借りを返すまたとないチャンス。石川を呼び、古賀や井上と同様、率直に話をした。 「真佑、1戦目はどこと当たるか知ってるか」「知ってます。韓国です」「おまえ、まだオリンピックの韓国戦を引きずってるやろ」「はい......」「分かった。韓国戦はスタートから出したる。今回で払拭しよう」
じつは石川は事前合宿ではあまり調子が上がっていなかった。それでも韓国戦ではがんばり、チームも3-0で勝利した。ただ、そのあとの試合でのプレーはあまりよくなかった。そう簡単に吹っ切れるものではないようだ。
それは石川だけじゃない。ほとんどの選手が前年の東京オリンピックで自信を失っており、最初のネーションズリーグは暗中模索の状態だった。
それでも、私はとにかくプラスの話をするようにしていた。活躍した選手には、「今日はよかったなあ!」と大げさなぐらいに褒めた。悪いプレーをしても、「これがネーションズリーグでよかったなあ。世界選手権ではがんばろう」と声をかけた。まずは 選手たちに自信を取り戻してもらいたかったからだ。
それにしても、石川はどうしたものか......。考えあぐねていた私は、世界選手権で窮余の一策を思いつくことになる。
<第1回から続く>