後にジェイテクトや日本代表でも事あるごとに「あのまま大学へ進んでも宮浦さんには追いつけないと思った」と口にしてきたように、前を行くライバルに追いつくためには、同じ道を歩んでも勝ち目がないと思っていた。だから迷わず「ジェイテクトに行きたい」と決断することができた。

　その選択は吉と出る。

　内定選手としてチームに合流すると、直後から出場機会を得て活躍。“期待の新星”として取り上げられることが飛躍的に増えていった。

高校卒業直後からインパクトあるプレーを披露した西田有志（2018年5月）©︎KYODO

　ただ、「海外に行きたい」と言い出す息子とは異なり徳美さんは元アスリート視点で息子の立ち位置を的確に分析していた。

「有志が加入してから（チームが）勝てないということは、有志にあれだけ打たせることがバランスを崩しているということ。私らはバスケでチームプレーをやってきているから、わかるんですよ。点数を取って、本人は気持ちいいかもしれないけれど、結果的にそれも独りよがりで他のところがうまく回っていない表れかもしれない。だからスタッフの人にも『遠慮なく、いつでも有志を外してもらっていいですから』と言っていました」

衝撃のW杯連続エース「なんでお前が！」

　だが今度は、その予想を有志が覆す。ジェイテクトでの活躍が評価され、2018年に日本代表初選出。翌19年のワールドカップでは日本のオポジットとして世界にその名を轟かした。特にカナダとの最終戦で見せた5本のサービスエースを含む6連続ブレークはまさに圧巻だった。2019/20シーズンにはVリーグ初制覇も達成した。

　完璧なまでに有言実行を果たしていく息子を、両親も認めざるを得ない。ただ、それでも「あれだけは許さない」と息子へのダメ出しを忘れないのが母・美保さんらしい。

2019年W杯カナダ戦でガッツポーズする西田有志　©︎KYODO

「ワールドカップの5連続サービスエース。あの試合は清水（邦広）さんが大ケガから復帰して、25得点の最多得点で清水さんにスポットが当たるべきだったんですよ。それなのに、なんでそれをお前が持って行くんや！と（笑）。あれはダメでしょ、許せませんよ（笑）」

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