- #1
- #2
プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「マリーゴールドはスターダムが反面教師」揺れる女子プロレス“業界1位と2位”の対決…ロッシー小川に勝算はあるのか「興行戦争も面白い」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/05/25 17:06
5月20日のマリーゴールド旗揚げ戦。前所属のスターダムでトップ選手として活躍していた林下詩美とジュリアは敗戦の船出となった
「マリーゴールドはスターダムが反面教師です」
旗揚げ前に小川の家を訪ねると、そこにはサイン入りのポスターやグッズが所狭しと置かれていた。小川は広げたポスターを指して言った。
「ポスターのレイアウトだって選手を刺激しますよ。端っこになった選手は、誰が中心かということを認識するはずです」
そして「最後のチャレンジです」と言葉に力を込めた。
「最後の力を出し切りたい。マリーゴールドはスターダムが反面教師です。スターダムは選手が多いから。それは自分も関係していたんですが、選手を入れ過ぎたかなと。もう余計なお世話ですけど」
3年後、マリーゴールドのリングでプロレス生活50周年を迎えられるであろうことに、小川は喜びを感じている。
「マリーゴールドの成功は別として、私個人には残された2つの目標があるんです。WWEのレガシー部門で表彰されたいのと、東スポのプロレス大賞で何かもらいたいです。どちらも生きている内にですよ(笑)。自分たちが面白いと思って信じたことをやれば、成功に導けると思います」
旗揚げ戦後、「MVPは誰か?」という問いに、小川はちょっと間をおいて「ボジラかな」と答えた。ボジラは20歳、181センチ、91キロのドイツ人レスラーだ。まだデビューして2年、ゴジラ並みの怪物ファイトを売り物にしていたが、アルファ・フィーメルから写真が送られてきて「日本で育ててほしい」と小川に託された。いきなりのメインイベント抜擢に、ボジラは十分に応えた。
「外国人選手も売りにしたい。昭和と言われようが何と言われようが」
後楽園ホールのファンからは自然に「ボジラ・コール」が起きた。ブーイングではなかった。ボジラは意外な反応に戸惑ったが、コーナーポストに上がった。
「マリーゴールドは5、6人のスタッフですが、1人で始めた時よりは多いですから。手作り感のある旗揚げ戦でした。コーナーポストの広告も選手が持ってきてくれたし。バックステージのインタビューボード、本部席や売店のカバーも作りました」
東ハトのキャラメルコーンの大袋が、CHIAKIに勝利したMIRAIに贈られるシーンもあった。後楽園ホールでは試合前も試合後も、グッズやサインを求めるファンの長蛇の列が続いていた。
「今回は旗揚げ戦という目新しさがあるから、スターダムとアクトレスガールズの両方のファンが来てくれた。でもそれが定着するかどうかはわからない。飽きられちゃうのが一番怖い。団体としては、交流に関してはNGがあった方がいいんですよ。ブランド力が付きますから。マリーゴールドは前を向いていきます」
小川は確かな手ごたえを感じていた。
<前編から続く>