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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「マリーゴールドはスターダムが反面教師」揺れる女子プロレス“業界1位と2位”の対決…ロッシー小川に勝算はあるのか「興行戦争も面白い」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/05/25 17:06
5月20日のマリーゴールド旗揚げ戦。前所属のスターダムでトップ選手として活躍していた林下詩美とジュリアは敗戦の船出となった
「昭和、昭和って言われますけど…」
小川にとって今回の旗揚げは今までで一番、経験を積んで迎えた旗揚げだという。ノウハウも知っている。とはいえこの先、評価が上がるのか下がるのかはわからない。興行にとってマンネリは禁物だ。今は目新しくても、何もしなければ飽きられる時が来る。
「昭和の興行師? 昭和、昭和って言われますけど、私はそんなに昭和ではないと思います。逆に全女の時も最先端を走っていたんです。昭和の頃は昭和っぽくなかったですよ。今回も『昭和のやり方で選手を引き抜いた』とか言われましたけれど。プロレスは非日常を見るものなのに、今はコンプライアンス、コンプライアンスでこぢんまりやらざるを得ない。組織が大きければ大きいほどね。でも、会場に来てくれる人は組織を見に来るんじゃない。リングを見に来ているんです」
ビューティ・ペアからクラッシュ・ギャルズ。熱狂する鈴なりの観衆を小川は間近で見てきた。だが、今は大会場でも3000人という壁にぶつかる。
「興行戦争も面白いかなとも思いました。魅力のある方を見ればいいわけですから。昔、隅田川決戦ってありましたよね。さすがに同じ日にはできませんが、同会場でその前後とかね」
スターダムと対置するなら、企業プロレスvs.個人プロレスということになる。それでも、いきなり業界1位vs.業界2位の構図だ。
「小さいからできることがある。小が大を超えるところを見せたい。今の私が、一番パワーがあると思います。一時は死んでいたものが蘇った」
そう言って小川は眼を輝かせた。「三浦海岸でのトレーニングの時、ちょっと坂を上っただけでもハーハーするんです」と語ったように、年齢的、体力的な問題は当然ある。現実にも直面する。
「忙しいですよ。今は何をするにしても自分がかかわっている。これから会場にも全部行きます。たまに居眠りする時間はありますけど」
映画『家出レスラー』の中で竹中直人が演じる小川がモデルの「グッシー」は、椅子にもたれていつも眠っていた。
「もちろんスターダムを始めた時、これが最後だと思いました。ノウハウも知っているつもりでしたが、知らないこともあった。ジュリアの名前は大きくなりました。でも、いつかは決まってはいないけれどジュリアがいなくなった後のことも考えなくちゃいけない」