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カブス・今永昇太はなぜ“面白いように”空振りが取れる?「防御率0.84」快進撃の秘密を五十嵐亮太が解き明かす「下から浮き上がるイメージ」
text by
五十嵐亮太Ryota Igarashi
photograph byGetty Images
posted2024/05/20 17:02
5勝0敗、防御率0.84(ナ・リーグ1位/5月19日時点)と抜群の投球をみせているカブスの今永昇太。打者を翻弄し続けられる要因を五十嵐亮太氏が分析した
平均球速で言えば92-93マイルで148-149kmといったところ。メジャーリーグはもちろん、日本の左投手の中でも飛び抜けて速いというわけではありません。にもかかわらずバットは簡単に空を切り、面白いように空振りが取れる。
秘密の一つは、フォーシームの回転量の多さです。メジャーのピッチャーの平均値は2200回転台ですが、彼の場合は2400回転台です。スピン量が多いボールは、スピンの軸さえ間違えなければ「ホップ成分」が生まれるので、バッターからするとイメージしていたところより高めに浮き上がってくるような感じを受ける。だから思わず手が出て、空振りやファウルになってしまう。
もう一つ、これは対戦したバッターに聞いたのですが、今永のピッチングフォームは打席に立つと独特な感覚に陥るのだそうです。ゆったりとしたフォームから、素早くポンっと球が出てくる。しかも伸び上がってくるので、タイミングが全く取れない。相手バッターに、真っ直ぐをより速く感じさせるピッチングフォームだということです。
下から浮き上がるイメージ
さらに特徴的なのはリリースポイントです。今永のリリースポイントは、メジャーの平均より10cmほど低いという数字が出ている。平均より低いリリースポイントから、平均より高いスピン量のボールが放たれるとなれば、下から浮き上がってくるイメージはより強くなるはずです。
いわゆる「フライボール革命」以降、メジャーではアッパースイング気味にバットを出してくるバッターが多い。そういうバッターにとって、低めから低めの球は全く苦にならず、むしろ打ちやすいと感じる。ところが今永の場合、低めの球は概ねスプリット、スライダーなど変化球なので、掬い上げたいバッターが振りにかかると引っ掛けて凡打になってしまう。一方で、高めのフォーシームは伸び上がってくるように感じるので、手が出なかったりタイミングを崩されてしまう。彼の特徴が完璧にはまっているんです。
相手チームの研究・対策にどう対応する?
この活躍は今後も続くのか。分岐点となるのは、2度目の対戦以降相手の打者にどう対応されるかというところでしょう。