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カブス・今永昇太はなぜ“面白いように”空振りが取れる?「防御率0.84」快進撃の秘密を五十嵐亮太が解き明かす「下から浮き上がるイメージ」
text by
五十嵐亮太Ryota Igarashi
photograph byGetty Images
posted2024/05/20 17:02
5勝0敗、防御率0.84(ナ・リーグ1位/5月19日時点)と抜群の投球をみせているカブスの今永昇太。打者を翻弄し続けられる要因を五十嵐亮太氏が分析した
メジャーリーグはどのチームにも対戦相手のボールを再現できるマシンがある。数値や映像のデータを入力すると、そのピッチャーはどのようなボールを投げてくるのか、実際にバッターが体感できるマシンです。2度目の対戦ともなると、相手チームも様々なデータを研究して対策を立ててくるし、各打者もこういったマシンで目を慣らしてくる。そうなった時、今永がどう立ち向かっていくのか。
とはいえ、そこに関して僕は全く心配していないです。というのは、1試合の中で打者が2巡目の対戦となってからも、全く同じような形で打ち取っている。メジャーのバッターともなれば一回りすれば色々と試行錯誤してくるものですが、それでも対応できない、というのは本当に打つのが難しいピッチャーだということ。数字以上に、バッターのイメージを上回っているボールを投げられている証です。
自分をどう変えていけるか
今永本人もメディアを通じて「これがいつまで通用するかわからない。バッターが対応してきたときにどう対応していくか、その前に自分がどう変えていけるか、というところが今後大事になってくる」という発言をしています。「投げる哲学者」の異名の通り、彼は学ぶこと、イメージすることに関してすごく敏感な選手です。得た知識を自分の中に落とし込み、ピッチングフォームやボールの中で再現できる能力に長けている。自分自身を客観視して、先のことまで鮮明に見通している選手でもある。いずれ訪れるターニングポイントでもさらなる進化を遂げていくことでしょう。
僕がMLBにいた頃から、シカゴ・カブスのファンは野球に対して特別な熱があると感じていました。カブスの試合のためなら会社を休んで応援してもOK、と言われるくらい地域に根付いているし、野球という文化を大切にしている。入団会見で見せたようなユニークな発言でファンの心を掴み、抜群の結果を残すことで熱狂的に愛されている今永。
7日のパドレス戦で登板した時、本拠地のリグリー・フィールドでスタンディングオベーションの中で三振を奪ったシーンは見ていて本当に痺れました。彼が今後、シカゴでどんな熱狂を巻き起こしていくのか、僕も楽しみにしています。
(構成/佐藤春佳)
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